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第35話

しかし、相も変わらずの飛距離… 俺の唇にまで飛んだそれを舌先で舐め取る。 「…ッ…それ、止めろ…」 「ふふ、何故だい?…締め付けてしまうからかい?…可愛らしいね、君の全てが可愛らしい…」 「ッ…言うな…バカ…」 「本当の事だけれど?…」 「そんなわけ…あるか…」 蹴人がふて腐れたように言い顔を反らした。 汗で顔に張り付いた前髪を流す。 「…もう、動いてもよいかい?…」 答えはNOだろう。 けれど… 蹴人の背中に腕を回して上体を起こした。 「…ん"ン…ッ…ま、まだ、動くなッ…」 深い… 温かくて気持ちがよい… 少しの刺激で身体を震わせる蹴人はとても可愛らしくて更に身体を密着させる。 心音が心地好い… 待ってあげたかった。 けれど、仕方がない… 俺は君を… 「君を抱きしめたかった…。もう動かないのでね、馴染んできたら、その時は、君から動いて…」 「…はっ!?ふざけるな…ッ…」 「できるよね…蹴人…」 「…ッ…お前は、意地悪だ…」 今日の俺は意地が悪い。 しかし、それらを全て受け入れてくれているのは蹴人だ。 蹴人は最終的にはいつも俺を受け入れる。 口では色々と言っていても、拒まれた事などはないのだ。 だから俺は調子に乗る… 「蹴人…俺はね、とても君の事が好きだよ…。いや、好きだと言う言葉ではとても語り尽くせない…。そうだな…愛している。…いや、それでもまだ足らないくらいだ…。だからこうして、俺は君と身体を繋げているのだよ…」 「…だ、黙れ…」 蹴人は愛の言葉を囁いたくらいで落ちてくるような子ではない。 そのようなことは百も承知だ。 今更ではあるけれど、もしもまだセックスフレンドとして俺が蹴人を抱いていると思われているのだとしたら… とても鈍感だ。 君が理解するまで何度でも言おう。 可愛らしい… 好き… 愛している… その言葉が耳から離れなくなるまで… 何度でも… 「ふふ、また締まった…」 「バッカ…いちいち言うな…」 「なぜ?…蹴人よりも身体の方が素直だからかい?」 俺は知っている。 その言葉は蹴人を興奮させる… 俺を強く締め付けて離そうとはしない。 「…ったな…ッ…」 「え?」 「悪かったな、素直じゃなくてッ!…俺だって必死なんだ!…これでも必死なんだ!!…なのに、…ふざけるなッ!!」 この様な反応をしてくれるとは意外だった。 軽くあしらわれてしまうと思っていた。 俺の言葉一つでこんなにも心を乱して… 本当に… 可愛らしい… 「…今日の君は、可愛らしい事ばかりしてくれるのだね。俺の為にこんなにも取り乱して…あまり可愛らしい事ばかりするのは止めてよ、蹴人…」 「知るか…俺より、身体が好きみたいな言い方するな…腹立つ…」 「ねぇ蹴人、わざとなのかい?…あまり煽らないでよ。君が動いてくれるまで、待つつもりなのだから…」 「…待たないでいい…だから、早く来いよ…」 「…困ったな。…ねぇ、蹴人…」 「なんだ…」 「奥へ、行ってもいいかな?…俺も、君すらも知らない…もっと奥へ…」 蹴人と出会うまで、自分がこのような甘い声色を持っているだなんて知らなかった。 今、最上級に甘い声色を発しているのだろう。 その証拠に蹴人の表情はなかなかにとろけていた。 言葉のみでこのようになってしまうだなんて… 「もっとって…」 「ん?…もっと…いい?…」 「…お前の、好きにしろ…」 「言って、蹴人…」 「…ッ…く、来ればいいだろ…」 「本当に君は、素直でなくて、可愛いらしいね…。きちんと俺に掴まっていて…」 あまり俺に許しすぎると後悔する事になる。 蹴人の言葉一つで簡単に浮かれてしまうのだから… 俺の首に腕を回し抱き付いてきてくれる蹴人に、全てを委ねてくれていると感じた心を弾ませてしまう。 これから蹴人が味わう事になる苦痛… ただでさえも未だに挿入時は辛そうに顔を歪める。 それなのに… 俺は謝る代わりに、これでもかとまるで甘やかすように顔中にキスを繰り返した。

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