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バス停
「今日はどこまで行けるかな」
僕は呟いた。
照りつける太陽が眩しい。どこまでも広がる遠くの青空に入道雲が浮かんでいる。
はあ、と思わずため息がもれる。
わざわざ地元まで帰らなきゃいけないなんて、しかも
「なんで徒歩で行かなきゃいけないんだよ…」
ああ、本当に億劫だ。地元に帰ったからといって特にしなければいけないことも無いのに……あ、
「アイツの顔は見ておかないとだったな…」
僕は幼なじみで親友の男の顔を思い浮かべた。
ずっと一緒に過ごしてきた。
小中高とずっと一緒、もはや腐れ縁のようなものだ。いや、腐れ縁は駄目か、もう僕とは縁を切るべき人間だ。
とにかく、僕にとって唯一の大切な親友で、片想いの相手だった。
いくら親友といえど、男に恋愛感情を抱かれてるなんて知ったらきっと気持ち悪いに決まってる。だから縁を切るべきだと思ったんだ。
そしてこの気持ちに踏ん切りをつけなければ。
しばらく歩くと海辺が見えてきた。
ちらほらと人影が見える。子供達の楽しげな笑い声が聞こえてくる。
「休憩、これは休憩」
我慢出来ず僕は自分にそう言い聞かせ、長袖をまくり久々に海に触れた。
あんまり長いこと海に入っていないから、海水は温かいのか冷たいのか分からなかった。
「もうそろそろかな」
古びたバス停の看板とともに壊れかけたベンチを見つけた。
僕たちが、悲しいことがあるとよくあそこに座って泣いていたっけ。
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