26 / 26
イケメン、優しく包み込む/その2
薄いピンクで本人を表すように控えめな唇は俺が触れるといつも震えた。それでも優しく触れて食むと、次第に熱い息が漏れ出す。かずくんの緊張が溶けているのが伝わってくる。そして舌を入れると、口内で縮こまっているかずくんの舌に絡ませ、優しく優しく、大切な物を扱うように音を立てて吸い上げる。気持ち良く思ってくれているのか、かずくんの身体も一緒にぶるりと震えた。
「んっ……はぁっ……。」
どちらのものかもわからない吐息が漏れて、頭が真っ白になるけど、それでも俺はキスを止めなかった。かずくんの不安を全部食べてしまえるように、一生懸命かずくんの唇や舌を貪った。両腕できつく抱きしめたり、頬を優しく撫でたり、時には薄く目を開いてかずくんの様子を伺った。赤い頬に、気持ち良さげに閉じられた瞳。目尻には少し涙がキラキラと光っていて、また愛おしさに溢れた。俺にしがみつくように腕を掴むかずくんの腕を、俺の首に回させた。かずくんは少し驚いて身体を離そうとしていたが、逃がさないように俺がきつく抱きしめると、抱き返してくれた。かずくんから抱き返してくれることなんて滅多にないから、凄く嬉しい……。胸がじんわり熱くなって、涙が出そうになる。
「はぁ、んぅ……んっ…………。」
お互いの体温を感じて身体が熱い。今度は少し唇を離して何度も角度を変えて唇を啄むと、かずくんの可愛い声が漏れた。俺がかずくんを誘うように啄み続けていると、かずくんは小さく口を開けて舌先を出した。俺に舐めて欲しいのか、上目遣いで俺を見上げている。その潤んだ瞳が可愛くて可愛くって、先程までとは違う感覚で胸が締め付けられた。
「んっ……んぐ……?」
俺はその舌に頬を撫でていた自分の親指を絡ませた。かずくんは驚いた表情で俺を見ている。かずくんの赤く熟れていて柔らかい舌に埋まる自分の親指が羨ましい。
もっとかずくんの舌を堪能したくて、ずるりと親指を出すと、人差し指と中指を入れた。舌を挟んだり、優しく擦ったりするとかずくんの身体がビクビクと跳ねた。すっかり唾液まみれになった指先の感覚や目の前のかずくんを見ていると俺の下半身がどんどん熱を持っていくのを感じた。
「は、……あっ…………。」
堪らなくなってかずくんの耳に吸い付く。全体を満遍なく舐め上げて、耳たぶを吸って、甘噛みをして、啄むようなキスをしながら首筋を舐める。そこは既にいくつもの俺のキスマークに犯されていたけど、それだけじゃ足りなくてまたたくさん痕を付けた。耳や首筋が敏感なのか、かずくんの声は一段と高くあがっている。
「あっ……あ、んぁっ…………んっ……。」
見ると、心地良さそうに目を細めつつも俺の指に一生懸命舌を絡めている。控えめだった舌の動きも今は大胆に俺の指を舐めて、時折吸い上げて、甘噛みをする。まるで俺の真似をしているみたいで可愛い。その証拠に俺がかずくんの首筋に軽く歯を立てると、「んぅっ……。」と息を漏らしながら俺の指の腹に軽く歯を立てた。
「こぉくん……。」
かずくんが俺の指を口から離し、蕩けた甘ったるい声で俺の名前を呼んだ。俺も首筋から口を離すと、長めの前髪の間から熱の孕んだ双眸でかずくんが俺を見ていた。薄く開いた口からは涎が垂れ、唇はキラキラと光っている。やっぱりキスをしてほしいのか、何か物言いたげに口をパクパクさせている。俺は優しく微笑んだ。
理性が今にも飛びそうで、頭がクラクラする。余裕を装うのでやっとだ。内心、悪魔が暴れ回っている。早く、早く、やってしまえと。しかし、ヤバいと自覚した途端、理性が戻ってくる。こんな状態のかずくんに手を出せるわけがない。こんななし崩しに身体を手に入れたって、その後何も残らないのだ。俺が欲しいのはそういうんじゃない。
「意地悪してごめんね。ちゃんと口にしてあげる。」
言うと、かずくんは恥ずかしそうにしつつも、少し安堵した表情だ。俺からキスをしてもらえることがそんなに嬉しいことなのか。これくらいなら何度だって与えてあげられるのに。
「んっ…………。」
俺はもう一度、かずくんの唇を貪った。きっと今の俺にできることは、できるだけかずくんに時間を使ってあげること。できるだけかずくんの視界に入っていること。かずくんがしたいと言うことをしてあげること。心配してあげること。たくさん構ってあげること。大切にしてあげること。優しく優しく身体にも心にも触れて、その不安を取り除いてあげること。プライドとか恐怖心も全部捨てて、目の前の愛しい人に誠心誠意を尽くすこと。
こうしてかずくんに触れながら考えれば、俺にできることはたくさんある。たくさんたくさん、甘やかしてあげるのだ。我慢してくれていた分、今までも、これからも。
キスをしながら、ずっと抱きかかえていたかずくんをベッドに下ろして、優しく押し倒した。俺と触れ合っていたせいもあるんだろうけど、身体が熱い。やっと寒気が無くなったのだから、これ以上悪化してほしくない。
「っ……はぁ…………はぁっ……。」
激しく深いキスを止め、ゆっくりと優しく舌を絡めた。掌で頬を包んで撫でた。次第にかずくんの荒い呼吸も落ち着いてきて、舌の動きが鈍くなってくる。先程飲んだ薬も効いているので、かずくんはあっという間に睡魔に襲われているのだ。それでも眠りに落ちるのが怖いのか、俺の首に必死に抱きついてくる。その様子がとっても可愛い。小さな子供をあやしているみたいで、胸がきゅんきゅんする。
「かずくん。もう眠たいねぇ……? ……ほら、見て?」
俺はかずくんの手に自分の指を絡めて、しっかりと握りしめた。かずくんはぼんやりとした顔で繋がれた手を眺めている。
「こうしていたら俺は離れないよ。かずくんと一緒。だから一緒に寝よっか。」
もう今日は俺もこのまま眠ってしまいたい気分だった。まだ夕方だけど洗濯物はしまった。お粥もさっき作ったからまだある……。何よりかずくん中心で回っている俺の生活の中に生活リズムなんて言葉は存在しない。かずくん命、だから。
かずくんの横に身体を落とすと、かずくんも俺の方を向いてくれた。
「かずくん大丈夫? 熱くない?」
おでこに貼ってある熱冷まシートに触れる。まだみずみずしさはあるけど、すぐに乾いてしまいそうだ。あーやっぱりこのまま眠れないなぁ。後でこっそり抜け出して、替えを持ってこないと。
俺の言葉に小さく頷いたかずくんは控えめに俺に擦り寄ってきた。それが可愛くて、また唇を重ねた。手を握り直して、指を絡めて、かずくんの口内を堪能する。そうして俺たちは、いつの間にか眠りについていた。
その後二時間ほど置いてから目を覚ました俺は、かずくんの熱冷まシートに手を当ててから、急いでベッドからこっそり抜け出して熱冷まシートの替えと、ペットボトルのポカリとコップとストロー、ジップロックに入れて冷蔵庫で冷やしたタオルを寝室に持って行った。飲み物はベッド横のテーブルに置いて、熱冷まシートを取り替え、かずくんが起きないようにそっと赤く腫れた両目を冷やした。
俺は目を腫らすまで泣くなんてことした記憶が無い。だからこんなに泣いてしまうかずくんの苦しさが痛いほど伝わってくる。我慢していた分もっと泣かせてあげたいけど、好きな人が悲しいなんて俺には辛いから泣かないでほしいとも思う。でもやっぱり、俺を求めて泣いてくれているのは嬉しい。今まで俺ばっかりがかずくんを求めていて、かずくんから求められることはなかったから。
それから夜になって、うなされて目が覚めたかずくんをよしよしとあやしながらポカリを飲ませた。飲み終わると不安な表情をしながらも何かを求めるように俺を見上げるので、またキスをした。その後も夜中に何度か目が覚めて、俺はその度にキスをした。俺を求めるかずくんを見て、嬉しい気持ちになった。
「んっ……んんぅ……。」
もう何度目かのキスに、気持ち良さそうなかずくんの声が漏れる。身体を拭いてあげていた最中だったので上体を起こして、俺の上に向かい合う状態で座らせて抱きしめた。まだまだ熱を孕む身体が辛くないように、俺の背中に大きな枕を敷いて身体を斜めにして、寄りかかってもらえるように工夫した。涙で濡れる頬を手で拭って腰を撫でてあげると、「んぁっ……。」と一層高い声を漏らしながら身体をゾクゾクと震わせている。
「ぷはっ……はぁっ……はぁ……はぁ…………。」
息苦しかったのか、俺の口から離れると呼吸を荒くしていたのでやんわりと頭を引き寄せて胸元に寄りかからせた。かずくんの髪の匂いを堪能しつつ、頭を撫でてあげると「んぅぅ……。」とかずくんの鳴き声が聞こえてきた。ほんとにこの生き物は可愛くってどうしようもないなぁ……。
そして俺は、この後どうしようかと頭を悩ませた。実はさっきからずっと俺の腰に当たっているのだ。…………かずくんの昂りが。
それに気付いているのかいないのか、かずくんは俺の腹にそれを押し付けながらも再び唇を寄せていた。その熱っぽい双眸に魅せられて、俺はまた唇を引き寄せられてしまった。可愛くて可愛くて仕方ない。こんなの生殺しだ。
「んっ……んむっ…………あぁっ……。」
俺はかずくんの腰を強く抱き寄せて、自分の腹にわざとかずくんの自身が当たって刺激した。案の定かずくんは背中をしならせて声をあげた。やっぱり。俺とのキスがそんなに気持ち良いのかな。だとしたら、とっても嬉しい。
「かーずくん。」
俺はかずくんから口を離すとかずくんの顎を持ち上げて、ぼぉっとする顔を見つめた。
「ここ、どーしちゃったのかなぁ?」
かずくんの自身の先端を指で撫でた。かずくんは自分では気付いていなかったようで、俺に触られてはじめて気付いたというように目を丸くした。
「あっ……あぅ…………これは…………ち、違っ……。」
かずくんは急に叱られることをわかっている子供のように申し訳なさそうに俯いて、俺の上で身体を縮こまらせた。俺の胸元から離れて、目を泳がせている。俺が怒っていると思っているのだろうか。
「ご……ごめんなさい…………ごめんなさい……。」
「ふふっ…………大丈夫。かずくんが謝ることなんてないよ。気持ち良かったんだよね?」
ネガティブになるかずくんの頬を撫でて、顔を俺に向けて、かずくんが怯えないように、できるだけ優しい声で、できるだけ優しく微笑んだ。
「嬉しいなぁ…………俺とのキスだけでこぉんなになっちゃうなんて……。」
「…………違う……これは……………………僕の……か、身体が……おかしくなっちゃったんだ……ごめんなさい……。」
かずくんの小さな瞳から大きな涙がボロボロと溢れ出した。それでも、自分がかずくんにとって快楽を与える存在だと身体が覚えてくれたみたいで俺は嬉しい気持ちのまま、かずくんの自身に手を這わせた。
「んっ……やだぁ…………。」
俺が触ると腰がビクリと跳ねる。ズボンの上から優しく撫でてあげると、かずくんの自身はもっと元気になった。
「かずくん。全部俺に任せて良いんだよ。さ、かずくんの寂しい気持ち、全部吐き出しちゃおうね。」
そう言ってズボンとパンツを下げるとかずくんの自身を外気に晒した。その先端からはキラキラとした先走りが垂れ流れていて、これから押し寄せてくる快楽を期待しているようだった。
そんな自身とは裏腹に、とうの本人はイヤイヤと力無く首を横に振っている。口元に軽く丸めた手をやって上目遣いに俺を見つめた。俺の様子を伺っているような、でも何かを欲しがっているような、そんな目だ。
こんな状況でも、きっとこの子は俺からのキスを求めているんだ。そう思って一瞬触れるだけのキスをしてまた顔を離すと、寂しそうな表情をしている。ああ、可愛い。
「かずくん、もっと欲しい?」
きっと今俺は意地悪い笑みを浮かべているだろう。隠しきれない下心を丸出しにして首を傾げると、言いながらかずくんの自身を握りこんだ。先走りを手に絡めて、ぬるぬると擦る。
「あっ……!」
その刺激に身体がビクリと跳ねて肩が震えた。そして快楽に悶えながらも俺の問いかけに、目を瞑って下を向きながらコクコクと何度か頷いた。
「っ……ぁ、あぁっ……んっ……。」
「かーずーくん。俺を見て、ちゃんと言ってほしいなぁ……? キス、もっと欲しい?」
かずくんの頬にちゅっとリップ音を立てながらキスをすると、かずくんは俯いたまま羞恥と快楽に悶えていた。俺の手首を弱い力で掴んで制止しているようだったが、遠慮せずに優しくかずくんの自身を扱いた。すぐに絶頂を迎えないように、優しく、でも次第に早く。
「ほ……欲しい…………っ。」
顔を赤面させ、涙目で、俺に縋るように見上げるかずくんの声が震えている。かずくんが俺だけを見て、俺を欲しがっている。こんなに弱っているかずくんを卑怯なやり方で自分のものにしてしまうなんて、と思うけれど、やっぱり好きな子が自分を求めてくれるという現実がどうしようもなく俺を歓喜させた。
「うん……かずくんが欲しがってくれるなら、たくさんたくさんあげる。」
かずくんに顔を近づける。俺は今どんな顔をしているかな。きっとだらしなく嬉しそうな顔をしてしまっているんだろうなぁ。そんなことを思いながらかずくんの頬に口を寄せて、手で頬を撫でた。もう片方の手はずっとかずくんの自身を包み込み、ゆるゆると動かし続けている。かずくんはもう全身が性感帯のようになっていて、俺の動作ひとつひとつに過剰なほど反応している。
頬を啄み、なおもかずくんを焦らし続けていると、何とかずくんの方から俺の頬に唇を寄せた。
「んっ、あっ……も、早く…………お願い、します……っ。」
はぁ……と、かずくんの可愛い口から漏れる吐息が熱い。ダメだ、今にも押し倒して、かずくんの全部を食べ尽くしたくなる。それだけはダメだから。そう思いながら今にも吹っ飛びそうな理性を辛うじて繋ぎ止めている。
それでもかずくんの様子が可愛くて、少し微笑んでからかずくんの唇をペロリとひと舐め。
「かずくん、ベロ出して。」
言うと、俺に顔を差し出しながら、恥ずかしそうに舌先を覗かせた。僅かに顔を出す舌先にじゅるる……と音を立てて吸い付き、外に誘い出した。
「んっ……はぁっ……。」
さっきよりも出てきた舌に、自分の舌を絡めた。ぺろぺろとアイスキャンディーを舐めるように、かずくんの舌を舐める。すると、小さな動きでかずくんも俺の舌に答えてくれる。俺が少し顔を離すと二人の舌が離れ、かずくんが追うように顔を近づけ、また舌が触れ合った。そんな駆け引きができることが素直に嬉しい。
気がつくと、無意識に動かし続けていた手から、くちゅくちゅと音が聞こえてきた。かずくんはもう達してしまいそうなのか、腰や太ももがヒクヒクと痙攣している。
「かずくん、もっと近くにおいで。俺の首に腕回せる?」
腕を開いてかずくんを招く。俺の上に横向きに座っていたかずくんは小さく頷くと、今度は俺の上に跨るようにして恥ずかしそうに俺の首元に手を置いた。
「ふふっ……これならいっぱいキスできるね? でももっとちゃんと腕回して、抱きついてほしいなぁ。そうしないと俺、逃げちゃうかもよ?」
「あっ……や、やだぁ……んんっ……。」
駄々をこねる小さな子供のような表情をしたかずくんが俺の首にしっかりと腕を回して身体を寄せた。ご褒美に、近づいてきたかずくんの唇に自分の唇を合わせ、吐息が漏れる隙間に舌を差し込んだ。そして、かずくんの自身のカリ部を親指でグリグリと押した。
「んっ、んんぅっ……あっ……!」
かずくんの腰が俺の足の上で跳ねる。
「ふふっ……もうイッちゃいそ?」
「んぁっ……ん、んんぅっ……。」
キスの合間に言うと、かずくんは小さく頷いた。すかさず唇に吸い付いて、「イってもいいよ。」と呟いて手を早めた。
くちゅくちゅくちゅくちゅ……!
「ん、あっ……んんぅっ、んはっ、んはぁっ……やっ、あっ……んんんんーーーっ!」
卑猥な水音を響かせながら、かずくんの自身から熱い液が俺の手にドロリとした感触とともに吐き出された。身体全体がビクビクと痙攣していたけれど、苦しそうに肩で呼吸をするかずくんの口を容赦なく塞いだ。
「はぁっ……ん、んっ……はぁ、はぁっ……!」
ちゅっ、ちゅぷっ……。
わざと大きく音を鳴らしながらかずくんの舌を啄む。下ではかずくんの吐き出した白濁を手に馴染ませ、かずくんの自身の裏筋を指でゆっくりと下から上へなぞった。するとかずくんの自身からは、どぷぷ……と少量の精液が流れ出た。かずくんの自身は吐き出した後もまだまだ元気なまま。俺は再び優しく手で包み込んで、強すぎる刺激を甘えないよう、優しく優しく竿を撫でた。
俺も正直我慢できない……。
かずくんから一度口を離すと、首筋に顔を埋めて、頬を擦り寄せた。かずくんはまだ呼吸を荒くしていたけど、俺の行動に少し驚いて身体を硬直させているようだ。俺はかずくんの体温を感じながらもかずくんに着せていたシャツを脱がせて全身を顕にさせた。そして肩にキスを落としつつ、自分の熱く猛った自身を取り出した。
「あっ、んっ……。」
俺の自身とかずくんの自身を擦り寄せて一緒に扱いた。先程出したかずくんの精液でぬるぬるして気持ち良い。かずくんの精液に包まれていると思うとめちゃくちゃ興奮してしまって、俺はあっという間に射精感が混み上がってきた。かずくんの肩から顔を上げてかずくんを見ると、かずくんも気持ち良くなってくれているようで、小さな口から可愛い喘ぎ声が漏れていた。
「あっ……あぁっ、んっ……あっあっ……。」
/
ともだちにシェアしよう!