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第3話

2人で転がるようにシングルサイズのベッドにダイブすると、ギイと悲痛な声をあげた。 スポーツマンの大澤と、ここで勝負するにはあまりにもフィールドが小さすぎる。 少し痛いのは我慢して床に転がると、大澤が馬乗りになった。 俺の上でキスをしかける大澤のシャツの隙間から、背中に指を這わす。 風呂上がりの湿った柔らかな肌が、手にフィットして心地がいい。 「ずっと撫でまわしていたい」と思いながら、汗ばんだTシャツを脱がしにかかる。 先ほどは凝視することが出来なかったが、今度はじっくりとその肉体美を堪能できる。 少し薄めの均整がとれた上半身と、ハーパンから伸びる逞しい太股。 そのアンバランスさが、とてもエロく映る。 薄い舌をしゃぶりながら、引き締まった腰に手を伸ばす。 「あれ、パンツ穿いてなかったんだっけ?」 「濡れたままのなんて、穿けるかよ。」 「なんか、ヤラしい。」 股間は服にペタリと張り付き、カタチがはっきりと分かるほど主張していて、湿った匂いが俺の股間も熱くする。 堪らずにハーパンごと性器を掴み、軽く扱く。 そこは直接触れてもいないのに、既に火傷しそうなほど熱を帯びていた。 手の中のモノは扱く度に硬くなり、先端から溢れる愛液がねっとりと手に纒わり付く。 早く触れたくて、濡れたそれを一気に脱がすと、同じタイミングで俺の短パンも下着ごとずり下ろされる。 雨音をBGMに、濡れた音と互いの息遣い。 クーラーを入れ忘れた部屋は蒸し風呂状態だったが、その不快さを感じないくらいには大澤に夢中だった。 鍛え抜かれた丸い尻に、ローションをたっぷり塗った指をつぷりと1本。 筋肉質な身体のせいかナカも窮屈で、指1本がすんなりと入る頃には、俺の方が我慢できなくなっていた。 「清水、きつい?」 「ごめん、一回出させて。」 大澤が俺の顔を跨ぐと、目の前にカタチのいい尻。 ローションをつけ直し、指を2本に増やすのと同時に、俺のペニスを柔らかな頬の粘膜が覆う。 それだけでイってしまいそうな程の快感で、思わず腰を浮かすと…… あっさりと口を離されてしまった。 「ご奉仕してやってるんだから、邪魔すんな。」 そう言うと、足首に体重をかけてがっちりとホールドし、ミサンガにキスを落とす。 その瞬間、薄汚れたそれが、魂を取り戻したかのように輝いて見えた。 忘れかけていたあの時の気持ちも、忘れなくてはいけないと諦めていたあの気持ちも、心の底から湧き上がってくるようだ。 あの時、誰もが憧れていた存在の大澤が、俺のを咥えている。 その姿を目の奥に焼き付けながら、太腿を撫でた。 筋に沿ってそっと撫でると、後孔がきゅっと締まる。 その姿にふっと笑うと、大澤がピッチを上げて追い込んできた。 ナカは見た目よりも大分締まっていて、弾力があるというよりは中に鉄でも埋まっているんじゃないかと思うほど硬い。 自分のモノが入っていく瞬間を想像するとともに、大澤の舌遣いに背中を押され、5分と持たずに口に放った。 大澤が振り返ると、飲みきれなかった白濁が口端についていた。 その艶めかしい姿に、賢者タイムを待つまでもなく俺の下半身は元気を取り戻す。 「活きがいいな。」 ゴムを付けながらそう笑われ、俺も負けじと指を増やす。 「ナカ、すげえきつそうだけど。」 「入るかな」と心配しながら、根元を掴んで腰を動かす。 ネチネチというよりも、メリメリと言った表現の方が正しい。 圧迫感が強烈過ぎて、腰を振っているわけでもないのに額に汗が浮き出る。 快感よりも痛覚が勝っているが、そんなことはどうでもよかった。 ただ、大澤を抱いていることが嬉しくて それ以外の感覚は全て麻痺してしまったようだ。 時間をかけて飲み込まれていくのを眺めていると、大澤の舌がちらりと覗く。 覚悟を決めて腰を掴んで一気に最奥まで貫くと、大澤がシーツを強く握りしめた。 濡れた艶声というよりは、雄たけびのような呻き声。 それなのに、大澤の顔を見ているだけでイきそうになる。 「もっ……と、入り口。」 「ここ?」 角度を変えて浅く挿れると、歯を食いしばっていた大澤の表情が溶けた。 高校時代は勇猛果敢なイメージで、こんな顔は夜の妄想の中でしかお目にかかったことがない。 でも、実際それを目にすると…… 妄想していた大澤よりも大分よかった。 床に頬を擦り付けて喘ぐ大澤を押さえつけ、形勢逆転とばかりに自分の思うように腰を打ち付ける。 「はあ、ああっ。んっ……もっと、あん!!」 フィールドで聞いていたよく通る声は、淫らに蕩けながら強請ってくる。 脳まで揺さぶられるような艶声に、いつもとのギャップで眩暈を覚えながら、太股を掴んでイイとこを抉る。 背中に目を向けると、日焼けした襟足と本来の白肌が混在していた。 いつも陽の光を浴びないところを全て暴いているという、優越感。 日焼けを知らない真っ白な丸尻が、腰の動きに合わせてボールのように跳ねる。 ナカは腰を動きに合わせ、メリメリと俺のモノをぴたりと銜えこみ離さない。 本当は痛いのに、大澤の悦に入った表情を見られるだけで十分だった。 床に白濁が勢いよく飛び出るのを見て、俺も速度を速めてフィニッシュを迎える。 「あー、疲れた。」 床に突っ伏したまま後処理も面倒といった様子の大澤に、俺も並んでひんやりとした床に頬をつける。 「なんか飲む?」 そう提案すると、こくりと頷きながら大澤もベッドに背中を預けて床に座った。 「あ、雨止んでる。」 「本当だ。」 カーテンの隙間から見える星空に目を向けると……。 「隙あり!」 そう言って、触れるだけのキスをされた。 「なんだよ。」 「別にいいじゃん。セックスした仲だし。」 不意打ちは、ズルい。 さっきセックスしたばかりだというのに、素の状態でされると妙に照れる。 いつの間に止んだのか……。 行為に夢中で途中から全く聞こえなくなっていた。 大澤にコップを手渡すと、美味そうに一気に飲み干した。 ビールの飲みっぷりといい、見ていて気持ちがいい。 少し涼もうと窓を開けると、むっとした湿気が室内に入り込む。 堪らずに窓を閉めようとすると、大澤の手に阻まれた。 「夏らしくていいじゃん。」 「クソ暑いからクーラーつけたいんだけど?」 俺の言葉は無視して、背中から覆いかぶさるように寄りかかってきた。 「ミサンガ、走ってる時に切れたんだ。」 「え?」 意味が分からず振り返ると、いたずらっ子のように微笑む。 むっとするような夜なのに、なぜか大澤の汗ばんだ肌が心地よかった。 「練習試合でこっち来てたんだけど、自主練の帰りに大雨でさー。」 「うん。」 「宿泊先まで走ろうと思ってたら、ミサンガが切れてることに気がついて……ここに来た。」 「うん?」 意味が分からず大澤を見ると、再びのキス。 一夜限りの相手にここまでサービスするだろうかと思っていると、肩に顎を乗せて甘えてきた。 ふわふわとした猫毛が気持ちよく、まるで猫のようだと頬を擦り付けていると、大澤が続ける。 「だから、最初からその気だったってこと。」 「え、え、え、はあ?」 ――その気って、マジ? 動揺や興奮や期待に胸が膨れすぎて、破裂しそう。 「大雨の中ずぶ濡れで来たら、いくら久しぶりでも流石に家にあげるだろ?」 確信犯めいた言葉に、呆気にとられる。 ――家に着いたばかりの律儀な大澤は、ドコに行ってしまったんだろう……。 見た目通り猫を被っていたのかと今更ながらに気づいたが、そんな嘘さえ可愛く思う。 だって、そこまでして俺に会いに来てくれたのだから。 「俺の家、亮介から聞いたってのは?」 「それも嘘。OB会の主軸メンバーだから、ちょっと住所録拝借して……。」 「個人情報、駄々洩れすぎない?」 そう文句を垂れると、甘いキスで誤魔化される。 「清水。」 「ん?」 「さっきの告白の答えだけど。」 「うん。」 「お前で妥協しといてやるよ。」 自信満々にそう言い放つと、苦しいくらいに抱きしめられた。 耳たぶをはむはむと甘噛みされ、首筋を痛いくらいにきつく吸われる。 まるで大きな猫がじゃれているみたいだと思いながら、ふわふわの髪をくしゃりと撫でると…… 耳元で囁いてくれた。 「拓斗、大好き。」 胸を熱くしながら髪を撫でていると…… ふと、あることを思い出した。 「そういえば、大澤の星座ってなんだっけ?」 「星座?おうし座だけど……?」 「マジか!!!!!」 「今日の1位はおうし座のあなた。ラッキーアイテムはミサンガ。最高の一日になるでしょう!」 朝の星座ランキングを思い出し、思わず吹き出してしまった。 占いなんて当てにならないと決めつけていたのに、ジンクスも捨てたものじゃない。 薄汚れたミサンガを見つめながら、そう思った。

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