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第10話
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ジュリオが部屋にとじ込められて三日になる。
実際には時間の概念がなく、眠りから覚めたのが三回という理由で勝手にそう思っているだけのこと。部屋には窓がなく時計もないのだ、時間だけでなく今が昼なのか夜なのかすら分からない。
ジュリオの願いに腹をたてすがたを消して以来、男は部屋に現れない。初対面で恐怖を心にすり込んだジュリオにとって、彼が現れないのは願ってもないこと。しかしながら彼と会わなければ、ジュリオは一生この部屋から出ることができない。
今頃ジュリオが戻ってこないと母親が心配しているはずだ。運が良ければ役人が捜索してくれているかもしれないが、貧民層の者がひとり行方不明になったところで人員を割く奇特さなど期待できない。
それにジュリオは城の王と思しき男に軟禁されているのだ、王族の不道徳を公にして解放するなど万にひとつもないだろう。きっと役人ぐるみで隠ぺいするに決まっている。
誰ひとりとしてジュリオに味方などいないのだ、こうなれば自力で逃げ出すしか方法はない。つぎに男がやってきたら、どれだけ怒られても帰してもらえるよう願おう。機嫌が悪くても怯まずに食い下がってやる。
ジュリオは虎視眈々と機会をうかがう。服が戻ってこなくても涙を呑み諦めよう。けれども絶対に母親の許に帰らなくては。顔を合わすのは怖い、けれど彼が来てくれなければ困る。なんとも皮肉な話だが、ジュリオは男に頼る他ないのだ。
起きているあいだ、ただベッドで横になっていたわけではない。暇をもて余したというのもあるが、部屋のどこかに抜け道でもないかと探っているのだ。
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