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第11話
ジュリオの過ごす部屋は客室なのか、大きなベッドとテーブルにチェア、書物の並ばない書架があるのみ。見た目を重視しているのか、窓のない壁に意味もなくカーテンが下がり滑稽だ。扉はひとつ、いつも鍵がかかっている。
日に三度その扉は開かれ、城の使用人がジュリオに食事を運んでくる。一度だけ使用人の目を盗み、テーブルセッティングをしている間に扉を抜けだそうとしたが、施錠がされているのか開くことは叶わなかった。
幸いにも食事の届く頃合いで、今が朝なのか昼なのかそして夜なのか、おおかたの区切りがつく。朝は七時が食事時だと仮定し、腹の空き具合から察するにそろそろ昼食が運ばれてくる。
食事が届いたら、そのときにでも使用人に頼んでみよう──王様に逢いたいと。
ベッドに正座をすると、固唾を呑み扉に視線を合わす。程なくすると扉から開錠された音が届き、ゆっくりと重たい体躯が開かれる。使用人がワゴンを引き部屋に入ってきた。
テーブルのうえに滋味深い料理が並ぶ。淡々とセッティングを進める使用人の許に近づくと、ためらいながらもジュリオは声をかける。
「あの……いつも食事を運んでくれて、ありがとうございます。それと、その……ええと……僕お願いがあって」
未だ一枚の着衣すら与えられていないジュリオは、ベッドのシーツをはがしそれを身体に巻きつけているだけ。視線を床に落とし、両足を重ね指をもじもじと絡めながら、はしたない格好を晒していることを今更ながら恥じらい頬を染める。
けれども恥じらっている場合ではない。途中で切ってしまった話のつづきを伝えようと顔をあげ、けれど視界にテーブルの料理が映り言葉を呑み込んでしまう。
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