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第21話

 それから手にするバスケットから木の実をつまみ、バルバトスの口許に運んでやった。はじめのうちは戸惑うバルバトスも、徐々にジュリオにほだされ好きにさせてやる。  ひと言も語らないバルバトスのそばに腰を下ろすと、ジュリオは他愛のない話を始める。  熱が出ると、母親は必ずジュリオのそばにいて、淋しくないよう話を聞かせてくれるのだ。するとジュリオは安心して眠ることができた。眠るとつぎの日には熱も下がり元気になる。  同じようにしてやれば、バルバトスも怪我が治ると考えたのだろう。ジュリオは思いつくかぎりの話をしてやった。  湖が黄昏に染まる頃、ジュリオは立ち上がると家に帰るという。鳥さんはやく元気になってねと残し踵を返すジュリオを、けれどバルバトスは腕を取り引き止める。そして重い口を開くと自分の名を告げた。  はじめは驚いたものすぐに笑顔になると、ジュリオはバルバトスの名を呼び──契約がなされた。  ジュリオの身に危険が迫るようなことがあれば、必ず助けに向かい守ってやるとバルバトスは誓う。それを聞いたジュリオの笑顔は更にほころび、まるで母さんを守る父さんみたいと称する。  それはどういう意味だと問えば、ジュリオは両親のことを話し始めた。  ジュリオの暮らす町は貧しく、それでも家族より添い幸せだった。けれどあるとき人身売買の男がやってきて、町でも美人だと噂のジュリオの母親に目をつけると、あわや連れ去ろうとする。

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