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第27話

「ジュリオの父さんはね、寡黙なひとだったけどとても優しいひとだった。母さん、父さんと一緒になるのを反対されて、家を飛び出してきたのよ」 「えっ」  初めて聞く両親の過去にジュリオは驚く。  母親の一族は商家としてそれなりの家柄で、すでに嫁ぎ先も決まっていたそうだ。かたや父親に両親はなく、根無し草のようにその日を生きていた。旅でたどり着いた土地でふたり出逢い当然のように恋に落ちる。  けれども母親の両親が許すはずもなく、ふたり駆け落ちをしてこの町にやってきた。そしてジュリオが生まれ今があることに、母親は毎日のように感謝をせずにいられない。 「ジュリオの人生はあなたのものよ。一度きりですもの、後悔のないように生きて」 「母さん……」  母親がジュリオに何を伝えたいのか、言葉にしなくてもそれが分かった。もう一度バルバトスに逢いたい、そして彼と一緒に生きていきたい。ジュリオの心に愛が溢れ、それは黒翼にのせ彼の許へ羽ばたいてゆく。  席から立ち「ありがとう母さん、いってきます」と伝えたジュリオは、扉をあけ放ち外に飛び出した。

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