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第26話

「いい匂い。いただきます」 「はい、召し上がれ」  にこにこと笑顔を絶やさないジュリオ。けれどそれが無理をして努めているなど母親は百も承知、食事が終わるころを見計らいジュリオに悩みでもあるのかと問う。  初めこそはぐらかしていたもの、執拗に問われたジュリオはもう隠し通すことができなくなってしまった。ともより嘘などつけるような性格ではない、城に向かった日に起きたことをすべて話した。 「──そうだったの。母さん何も知らずにごめんね」 「母さんが謝ることじゃないよ。これは僕の問題なんだ、はやく忘れて現実を見なきゃ。大丈夫、きっとすぐ元気になるよ」 「ジュリオはそれでいいの? ほんとうに忘れてしまってもいいの」  母親の問いに返す言葉がない。忘れられるはずなどないからだ。けれど、だからといって、どうすればいいというのだ。彼は魔王、かたやジュリオは人間。住む場所も生きる時さえ違うのだ、どうすることもできない。  枯れてしまったはずの涙がまた流れる。声も出さずに泣く息子の頭をそっと撫でると、母親が父親の話をして聞かす。

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