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第25話

 初日から遅刻をしては元も子もない、身なりを整えると母親がこしらえてくれた弁当をポシェットに詰め、早めに家を出ることにした。製粉所まで徒歩で三十分ほど、この分なら余裕で到着するだろう。  道なりにはくだんの森がある。それを横目にジュリオはため息をつく。いつの日か胸の痛みや渇きも癒えるのだろうか。「がんばれジュリオ」と沈む気持ちを鼓舞して先を急ぐのだった。  ジュリオが製粉所で働くようになって半年。稼いだ賃金のほとんどを母親に渡し、その分お針子の仕事を遅くまでしないでよくなった母親は、家で過ごす時間が増えた。  それだけジュリオと過ごせる時間も増えると、息子のちょっとした変化に気づく。働きに出るようになって成長したとも考えられるが、ふとしたときの表情が切なげだったりため息の数が多かったりと、やはりどこか以前とは様子が違う。  その日もジュリオが帰ってくるまでに帰宅した母親は、夕食の支度をして息子の帰りを待つ。 「母さん、ただいま」 「おかえりなさい」  部屋にただようコンソメの香り、ジュリオの腹がぐうと鳴く。今日はシチューだと明るく振る舞うジュリオに、「はやく手を洗ってきなさい」と母親は促す。部屋に戻り上着を脱ぐと、手を洗いうがいをしてテーブルに着く。

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