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第24話

「逃げてんじゃねえよ。郁は俺のもんだろ、俺が嫌いか?」 「そそそそんな……嫌いなわけない」 「だったら俺に背を向けんなよ、傷つくだろ」 「兄ちゃん……」  淋しそうな兄ちゃんの顔を見た瞬間、ああなんてぼくは悪い子だと後悔した。ぼくが兄ちゃんのことを大好きなように、兄ちゃんもぼくを大好きでいてくれる。好きな相手に逃げられてしまったら、すごく傷つくのはあたりまえなのに……。  ごめんね兄ちゃんと謝ると、ベッドに戻り横になった。するとぼくのうえに兄ちゃんが乗ってきて、それから耳もとで「それにまだお仕置きは続いてるからよ。観念して俺に食われろ」と信じられないことを言う。 「そんな……兄ちゃんのひとでなし──っ!」  うっかり兄ちゃんに騙されるところだった。もう絶対に兄ちゃんのうまいセリフには騙されないぞ。

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