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prologue

夜の空は、星が煌めき、月が輝く。 夜の海は、ただただ漆黒。 波は、全てを飲み込むように迫り、波は、全てを引きずり込むように後戻る。 それでも夜の海に来るのは、静寂の中、波の音が煩いほどに身体の中で響き渡るから。 瞼を下ろせば、夜の海と同じ。 ただただ漆黒。 それならば、夜の海で過ごしたい。 残暑が厳しい昼間。 夜になっても熱が落ち着かない。 座り込んだ砂浜から熱が移り、時折吹く海風がその熱を閉じ込める。 篭る熱に蝕まれ、響く音に侵される。 あぁ、このまま夜が終わらなけれいいのに。

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