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第1話
「花田さん、合コン行きませんか」
まさか誘われるとは思わず、一瞬驚いたけれど顎に手を置いて考えるふりをした。
「合コン……かあ」
「興味ないわけないですよね。花田さん、ちゃんと遊んでるんですから」
ちゃんと遊んでる、という言葉には語弊がある。
本命がいるから遊んでいるだけ、が正解だった。
でも、合コンは……少し弱い。
それでは彼は反応しないかもしれない。
「遠慮するよ」
「なんでですか。CAですよ。花田さんなら絶対にモテるじゃないですか」
「うーん。僕もそろそろ身を固めたいからね。合コンより、お見合いかな」
ごめんね、と片手をあげてにっこり笑う。
それ以上は聞かないよって、ラインを引くと流石うちの会社に勤めている後輩。
空気をすぐに読んで、去って行った。
お見合いか。確かにお見合いなら、面白い。
マンネリしていたんだよね。彼を追い詰める方法にもさ。
ふと空を見上げる。
夜の空に浮かぶ静かな月を見つめて、思いついた暗にほくそ笑む。
これは復讐。
甘美で醜悪な復讐なんだ。
彼の耳に入るような、ビックネームがいいな。
帰ろうとしていた足を、再び会社に向ける。
マンネリの解消は、復讐なんだ。
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