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5-S
「も、森保君?おはよう?」
「……」
久しぶりの三島の挨拶は、やっぱり「おはよう」だ。
只今、午後0時25分。
気まぐれ猫は木陰でひと休みしていた。
三島はよく頼られている。
「三島、コレ準備室に戻しといて」
「三島、課題集めて職員室に持ってきて」
教師は何かと三島を呼ぶ。
「三島、数学の宿題見せて」
「三島、家庭科の裁縫手伝って」
ゆかいな仲間たちも何かと三島を呼ぶ。
「みっちゃん、そのお菓子オレにもちょうだい!」
もちろん、吉川も何かと三島を呼ぶ。
頼られているというより、都合のいい奴か。
いや、
「三島、この問いの解答惜しいな」
「三島、オマエの言ってとこテストに出たわ」
三島は人気者だ。
三島はあまり目立つ奴ではない。率先して何かをするわけでもなく、面白いことを言うわけでもなく。
それでも、三島は人気者だ。
何となく周り溶け込んで、いつの間にか当たり前にそこにいる。
そして、何となく周りから離れて、いつの間にか別の場所にいる。
ごくごく自然に。
ただ…、
「みっちゃん、待って。さっきのお礼」
王子様は気まぐれ猫を呼び止める。
そのシーン、いりますか?
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