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第80話

 先に温泉に入り、小さな温泉街を散策。有名な温泉地だから客は、多い。  「あ、あそこ!あそこだよね、凛。」  「うん、あそこ。前、行ったから。」  目当てのスィーツ店に立ち寄り、店先で、プリンを頂く。俺は食べないけどね。  「美味しいな。そんなに甘くないし。」  「でしょ、ロイ。蓮、食べれないなんて勿体無い。」  「食えなくても作れるから別にいい。」  宿に戻って、夕食までマッタリ。  「落ち着いた和風の部屋も、なかなか良いな。」  「うん、俺も初めてだよ。」  「難点は壁が薄そうだな。」  「なんで?壁が問題?」  「夜が楽しめない。」  「もー、一晩くらい、我慢しなよ。」  「何言ってる、旅先で交わるのは楽しみの1つじゃないか。」  「なんか、蓮みたいになってきてるよ。」  「いい部屋なんだけどな。」  「うん、俺も気に入ってるけど、問題があるの?」  「声が漏れる。」  「・・・温泉!湯治が目的だろ?一晩くらい我慢しろよ。」  「やだよ。こんな良いムードなのに、なんで我慢しなきゃいけないんだよ。」  あ~、もう頼むから旅先で発情しないで下さい。  夕食も各自の部屋で。一緒でも良かったけど、ま、お互いパートナーが一緒だからそこはね。  「酒、あんまり飲まないでね。」  「何でだよ。日本酒も売りなのに。」  「だって、この後さぁ・・?」  「あ、隣の宿の温泉にも入りたいな。源泉が違うから、濁り湯だって。行きたいなぁ。」  「・・・わかったよ、食ったら行くよ。ハァ。」  「溜息は、幸せが逃げるぞ。」  「いやさ、また最初から凛、仕込み直しかなぁと。・・・イッテェ、蹴るなよ!」  「変な事ばっか、言うからだろ?もう。」  「ありゃ?裕太達もどっか行くの?」  「うん、隣の宿。濁り湯って書いてあったから。」  「何だ、俺達も行くよ。」  「じゃ、一緒だね、上がったらラムネ飲もう?」  「お、良いね!」  山間の傾斜にある宿だから、階段も急。蓮に抱えられながら、裕太と喋る。まぁ、お姫様抱っこじゃない。狭いから肩に担がれてる。  「はい、はい、ラムネね。」  「うーん、滑るな。凛、歩くの厳しい。」  「マジ?湯船まで結構ある?」  「うん、通路歩いて石段降って湯船みたい。川沿いだね。」  「しょうがない。抱くよ?」  「仕方ないか。お願いします。」  ちゃんと腰にタオル巻いても、ケツみえてる気がする。  「うわ、良い眺め。夕方だから、宿の灯りがついて、綺麗だよ、ロイ!」  「あぁ、そうだな。風情があるって奴か。」  そういえば、ロイは、ナイトウォーカーで、こんな観光などしてこなかっただろう。落ち着いては見えるが、ノリは、裕太と同じで楽しんでる。  「蓮、この温泉で良かったね。2人とも楽しんでる。」  「そうだな。旅行なんてしてないからな。俺達に気を使って。」  勿論、俺の回復の為って、名目はあるけど、今までのお礼の代わりにもなるかな?  部屋に帰ったら、もう布団が敷いてあった。  「この旅館のフカフカ布団堪らないなぁ。気持ちいい。」  まだ、上手く動かせない身体を今日は結構動かして疲れた。でも、寝る前のストレッチは忘れずに。仰向けになって、手脚を上げてブラブラ。  「ストレッチ、するのは構わないんだけどさ。パンツ丸見えなんだけど。」  あ、浴衣だった。忘れてた。  「・・・パンツ見ただけで、勃たせるなよ。」  「仕方ないだろ?誰でもない、凛のパンチラだぞ。健全な男子ならば勃つ!」  いや、力説しなくていいです。ちょ、ちょい待て。のしかかるな。  「ま、待って。駄目だってば。壁薄いんだろ?一晩くらい・・」  後の言葉は、蓮の唇に飲まれた。リハビリエッチはしないって決めてから、求められる回数も増えたし、俺も頑張って受け入れてる。受け入れてるけども!  わー、リング付けてるし。  今夜は長そうだ。はぁ。  「ちょっ、ちょっと、待って。ね、今日は隣、凛達居るしさ、ね、明日、明日帰ってからね?ね?」  「嫌だね。私は今、裕太を欲しているんだよ。明日じゃない。今だ。」  「声、漏れたら恥ずかしいじゃん。ヤダよ。」  「そうだな。あぁ、コレ、咥えてたら良い。」  「そう言う問題じゃないんだけどなぁ。」  「声さえ、解決すれば良いんだろう?」  もう、浴衣の前を割って、押し倒されてる。  「何か、どんどん、蓮に影響されてる気がする。」  「そうか?多分、元々同じタイプだからな。まぁ諦めろ、裕太。今夜は楽しむぞ。」  やっぱ、やるんだ。何か凛の気持ちが良く分かるようになってきたよ。  朝食をとって、ロビー?カウンターのある所で待ち合わせ。囲炉裏があって、雰囲気がいい。  「おはよ、凛。」  「うん、おはよ。」  互いにネコだから、もうね顔見たら分かるわ。  昨夜、ヤッたよね。ノンビリしに来たのに疲れてる。  「まだ、蕎麦は、早いだろ?確かインフォメーションの近くに無料休憩所があるからそこで休みたい。」  「そうか。分かった。行こう。」  まだ、午前中、早い時間だから、誰もいない大広間。奥の隅っこで、裕太と俺はもう一眠り。蓮とロイは、温泉に行くらしい。  2時間位したら戻ってきた。  「ど?休めた?」  「疲労の原因が聞くな。まぁ、眠れたし大丈夫。」  「う~ん、俺も結構深く眠れたから復活!もう、どら焼きの店、開いてるかな?」  「あ、忘れるとこだった!すぐそこだから、行こ!」  なんとか立ち上がって、ヨタヨタ歩く。自力で歩かなきゃ。  「随分、歩けるようになったな。」  ロイが呟く。  「昨夜、頑張ったからな。」  荷物投げつけたけど、俺、悪くないよね。  ま、まぁ恐らく昨夜頑張ったせいか、何とか急な小道もゆっくり歩ける。車椅子や抱っこじゃない。うん。疲れるけど、嬉しい。  「よ、よく食べるね。」  裕太が、若干引いてる。  蕎麦街道について、目ぼしい店で昼食。1番高くてボリュームのある定食を頼んだ。  「体の割に昔から食べる方だったけど、やっぱ、身体の回復にエネルギー使うんだろうな。目覚めてから食べる量、増えたね。」  「なるほど。まぁ蕎麦はヘルシーだから思いっきり食べれるね。」  「うん、美味いね。」  「うん、分かったから、ちゃんと飲み込んで喋って?口の中、丸見え。」  一泊二日、短かったけど天気も良かったし、美味しいものも沢山食べれた。温泉もちゃんと堪能出来たし、充実した時間でした。  帰宅してからも順調に回復。  もう、車椅子も杖も要らない。走ったり、階段駆け上がるのはまだ出来ないけど、日常生活には支障が無くなった。長い眠りの間にすっかり部屋が散らかってしまって、チョコチョコ片付けてはいるんだけど、細々した物はまだ、見てなかった。  「お、懐かし。蓮、俺の若かりし頃の写真出てきたよ。」  「若かりしって、今も若いだろ?」  「見た目はねぇ、でももう60代だぞ。」  「それを言うな。萎える。」  「萎えろ~、萎えろ~、俺が楽になる。」  「ふ~ん、エッチ無くなっても良いんだ。」  「え?い、いや、何事も程々にね。」    「どら、どの位の若かりし頃だよ。」  数枚の写真。両親が亡くなって、蓮とも別れていたから、投げやりで実家の物は殆ど始末してしまった。写真残ってたの奇跡。  「若いって、赤ん坊じゃん。へぇ、可愛いな。癖毛がクルンクルンして。女の子みたいだ。」  「うん、よく女の子の服着せられてたよ。女の子欲しかったみたいだね。華が、蓮と俺の関係、勝手にカミングアウトした時もかぁちゃん驚かなかったし。」  「ちょっと待て。この美少年も凛?」  「当たり前だろー。何で他人の写真を後生大事に持っとくんだよ。」  「た、確かにそうだけど、可愛い過ぎる!セーラー服の方が似合うんじゃ?」  「それも何度も言われた。言うと思ったし。」  「・・・本当に男は、俺が初めてだよね?」  「・・・・何、疑ってんだよ。」  「こんな可愛いかったら、男女問わず、告られただろ?」  「まぁね。モテたかモテなかったかと聞かれたら、モテてたね。・・・男子からもだけど。」  「うわーやっぱり!初キスは?キスはどっち?」  「馬鹿か。男と付き合ったことないって言ってんだから、女に決まってんだろ?ま、男子の先輩には、結構しつこく迫られたけど、逃げた。」  「マジで逃げ切れた?大丈夫だった?」  「大丈夫に決まってんだろ。男関係は、全部、蓮が初めて!分かった?」  「・・うん、分かった。」  「それに迫ってきてた先輩は既にアッチの世界に逝ってる。」  あぁ、そうか。と納得。過去までヤキモチ妬かれたらたまらないな。  俺が眠って、それから回復するまで、とりあえず平和だったのは、確か。  うん。良いことです。平凡な日常。1番大事です。

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