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第93話

昨日、何か臭うとテンが、言っていた。気になる。日中だけど周辺を探す。微かに残り香がある。臭う。 いる。奴等がいる。 「いるね。臭う。」 「あぁ、居るな。さて、どうするか。」 華も周辺を探る。 「臭うけど、今は眠ってる感じだわ。」 「テンが、ターゲットなのかな。」 「多分な。思い出したくないけど、凛のドイツでのアレと同じだと思うよ。」 「この件が済むまで、学校休ませられないかな?もうすぐ夏休みだし。」 「そうだな。その方が良いだろう。」 だけど、奴等は眠ってなんかいなかった。 「遅いなぁ。寄り道せずに帰って来なさいって言ったのに、もう6時過ぎてるよ?」 「隆君に、連絡とってみよう。」 隆君は、何も知らなかった。 「すいません、夜分遅くに。」 心配なのか、隆君が来た。 「心配だよね、もう少し待ってみて、探しに行こう。」 「いや、もう行きましょう。学校は今日、終わったの2時ですよ。」 マジかよ。 周辺を華達も頼んで探す。 靴が片方、道路に落ちてた。 嘘だ。嫌だ。信じたくない。震えながら靴を手に取ってみた。 「れ、蓮、蓮!」 「凛、落ち着こう。殺される訳じゃない。」 「でも、捕まったら、犯される。どんなに苦しいか俺しか分からない!」 「サーチします。」 健太が、靴を持ち、集中する。 「分かりました。そんなに遠くじゃないです。裕太さん達も呼んで、行きましょう。」 「うん、行こう。」 「俺も行きたいです!お願いします!」 「隆君、危険なんだ。君は連れていけない。」 「テンの、天馬の恋人です!連れてってください!お願いします!」 華が、裕太とロイを連れてきた。 「貴方も行きたいのね?命の保証は出来ないわよ。」 「天馬に逢いたい。天馬を助けたい!」 「姫、彼も連れて行きましょう。」 「・・・わかった。じゃぁ、飛ぶよ?掴まって。」 そこは、廃屋だった。 死臭が強い。獣臭もする。 悲鳴が聞こえた。 「天馬!天馬、何処!」 天馬を探して廃屋を走り回る。 天馬は、テーブルのような台の上で、闇の者、獣達に犯されていた。 「隆君、来ちゃダメだ。来るな。」 「嫌だ、俺が助ける。・・・テン!天馬!」 「た、隆?隆、助けてぇっ!」 奴らも俺達に気が付いた。 「お迎えが来たな。まぁ、遊んでやれ。ディウォーカーなぞ、赤子の手を捻るより容易い。」 アイツが、リーダーか?翼がある。天使? 「奴は、堕天使だ。いつもの奴等より遥かに強いぞ。」 ガブリエルが、現れた。 「ガブリエルか、久しぶりだな。なんだ、お前はディウォーカーの肩を持つのか?神の僕なのに。」 「ルシファー、お前こそ、地べたを這い回る闇の住人を従えて、少年1人を誘拐する情けない者になったな。」 「愉快じゃないか?神に祝福された者を蹂躙させるんだ。汚して生きる気力を奪い取る。いや、愉快だ!」 高笑いする堕天使。テンの身体から、離れて俺達に敵意を向けて来た。 戦いが始まった。 数は少ないが強い。戦いというより、防戦一方だ。 俺たちの戦いの隙をぬって、隆君が天馬を奪い返した。 「隆君!そのまま逃げて!」 「はい!」 隆君は天馬を担いで、廃屋の外へ駆け出す。 「愚かな。逃げられると思うな。」 パンッと弾かれて2人の身体が宙を舞う。何とか隆君の体を受け止めたが、テンは叩きつけられてしまった。 「2人とも意識がない、物陰に隠せ!」 蓮の指示の通りに、隆君と天馬を隠す。 「うわっ!」 裕太が、襲われた。壁に叩きつけられ、ズルズルと、ずり落ちる。身体中、傷だらけで何とか生きてる状態だ。 ロイも華も、俺達も、余裕が無い。 満身創痍で戦う。 天馬も、目を覚まして能力で戦う。それでも相手にかすり傷1つ付けられない。 気がつくと、ディウォーカー側で、意識があるのは俺だけ。 全員、グッタリと地面に投げ出されてる。でも、灰になってない。生きてる。 「その少年を渡せ。そうすれば、命は奪わない。見逃してやる。」 「この子は渡さない。絶対に。」 「強情だな。みんなで仲良く、灰になりたいのか?」 「・・・俺、俺が代わりにそちらに行く。だから、この子は渡さない。」 「ほう、自ら、人身御供になると。まぁお前はその子よりも美しいから、汚しがいもあるだろう。」 暫し、沈黙。 「分かった。その子の代わりにお前を連れて行く。」 「・・・少し時間をくれ。別れを告げる。」 「ふむ。良いだろう。」 意識がない蓮の横に、グッタリとした天馬を寝かせる。少し顔を拭いてやって 「蓮、またお別れだよ。もう何度目だろうね。・・・行きたくないよ、でも行かなきゃ天馬が傷つけられる。汚れるのは俺だけで良い。天馬、頼むね。愛してる蓮、ごめんね。」 眠る蓮にキスをした。もう、逢えないかもしれない。今までの奴等と次元が違った。皆、倒されて、俺だけフラフラだけど意識がある。 「皆んな、さよなら。天馬、頼むよ。」 何とか立ち上がって、ルシファーと闇の住人達の元へ向かう。 「もう、彼奴らに手を出さないでくれ。俺は逃げない。」 ガブリエルが遠目に立っている。哀しげな顔だ。 「わかった、約束しよう。お前が逃げ出さない限り、手を出すことは無い。」 (蓮、天馬。もう、俺は死んだと思って。愛してるよ、2人とも) 最後に心の中で、2人に別れを告げた。 ルシファーは、俺を包み込むと、廃屋から立ち去った。

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