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第94話

もう2回目の監禁だ。 慣れるのも早い。 裸に小さな布一枚。 煉瓦と石畳の牢屋に入れられてる。 (ドイツん時と同じだなぁ。) ただ、窓が広い。それから、監禁されてるのは、俺だけじゃなく一際美しい男女が数名。中には天馬と同じくらいの子供もいる。 助けてやりたいけど逃げたら、蓮達が危なくなる。済まないな。 ルシファーという堕天使は強い。神から与えられたネックレスも奪われた。 世話係の人間もいる。身体には、ヴァンバィアの噛み跡。もう、村には帰れないと言っていた。 監禁されてるのが、複数いるから毎日、輪姦されてたドイツよりマシかもしれない。 暖かい地域にあるこの場所は、季節感が無い。だから、どの位、時が経ったのか分かりにくい。ただ、髪が伸びて大体、この位かなぁと感じる。 もう1年は経った。 (天馬も3年生かな?ん?高校かな?どちらにしろ、成長しただろうなぁ。チビだったけど、背は伸びたかなぁ。) 心の支えは蓮から貰ったマリッジリング。少し緩くなってしまったから、クルクル回すのが癖になった。 獣達は、俺がいたくお気に入りらしく、俺の順番が来たら、騒ぎ立てる。 犯されてる間も他の事考える。蓮、ちゃんと父親してるかな?誰か好きな人見つかったかな? 「おい、コイツ、泣いて喜んでるぞ!もっと廻せ!」 喜びの涙じゃないんだけど、言い返すのも面倒だから、やられるがままだ。 駄目だなぁ、諦めなきゃいけないのに。涙なんて流してるのは、まだ逢いたい、愛おしいって思ってんだろうな。 牢屋に戻って鎖に繋がれる。疲れた身体には石畳は厳しいけど、犯されるよりマシ。 横になって、身体を丸めて眠る。 (逢いたいなぁ、せめて夢の中でも良いんだけど。) なかなか夢もみない。虚ろな時間が過ぎるだけだ。 「ねぇ、健太さん、まだ分からない?」 「ごめんな、天馬。凛さん自体が気配を消してるから、分からないんだよ。」 「天馬、健太を責めるな。凛は、俺達を守る為に行ったんだ。地道に探すしかないんだよ。」 「もう、何年経ってるんだよ!高校なんかどうでも良いのに!」 「テン!落ち着け、ちゃんと学校に行って、しっかり普通の生活を送る事が、凛の想いだ。俺も探してる。ちゃんと見つける。例え、凛が諦めても俺は探し出す。」 「パパ・・・。」 「凛は、俺のネックレスに、愛してるって想いを残した。天馬を頼むって。だから、天馬はしっかり学校に行ってくれ。」 「そうだよ、テン。学校、休みになったら探しに行こう。」 「隆、隆ありがとう。」 凛、何とかやってる。隆君も天馬の支えになってるよ。残された仲間も、それぞれ強くなる様に鍛え直して迎えに行くからもう少し待ってくれ。指輪に触れ、凛に想いを寄せる。 窓から、満点の星空。 (綺麗だなぁ。蓮や天馬も見てるかなぁ。帰れたら、もし帰れたら、一緒に温泉とか行きたいなぁ。) 諦めきれない自分に溜息が出る。 蓮達を守るには、ここから逃げない。だから、二度と逢う事はない。 諦めなきゃ、諦めなきゃって想いながら月日が流れる。 「お前の美しさは、衰えないな。」 珍しくルシファーが、レイプする部屋に居た。 「あの子供ではなく、お前で正解だったのかも知れないな。お前の美貌は、神の賜物だ。」 そんな事、どうでもいい。 台に上がって、脚を開く。獣達が先を競って、俺に汚らわしいモノを突き立てる。 週に何度かの水浴び。暖かい地域だから、水で良い。鎖を持つ獣と、世話係の人間で身体を清める。 「はぁ、気持ち良い。」 「あの坊やは、昨夜、犯されて亡くなりました。」 「・・・・そう。せめて魂だけでも救われたら良いね。」 「えぇ、そうですね。」 救えなかったな。ごめんな。 でも、ここを出た所で帰る場所なんてあるんだろうか?監禁され、犯され、汚れた人間を受け入れてやる寛容な場所なんて無い気がする。それに悪夢が死ぬまで付いてくる。 また、悲鳴が聞こえる。新しい獲物を持って帰ってきたようだ。 窓の外に木が生えてる。繁ってきたから、手を伸ばしたら、小枝に届いた。数本折って、十字架を作った。木の皮で、紐を作って。 ネックレスとまでは、行かないけど想い、伝わったら良いなぁ。 手にスッポリ入る小さな十字架。 両手で、包んで蓮を想う。 (蓮、元気?俺も元気。天馬の為に新しいパートナー探して?俺はもう帰れない。) 涙が溢れる。好きなのに、愛してるのに別れなきゃいけない。天馬の為には新しいパートナーがいる。蓮にお別れの想いを手作りの十字架に込める。 世話係の人間に 「コレ、教会に持っていける?」 「教会ですか?私も村に入れないんです。」 「うん、分かってる。だから、夜にでも、教会の入り口にでも置いてくれたらありがたいんだけど。」 「・・・分かりました。入り口に置いてきます。」 「ありがとう。もし、危なさそうだったら、捨てていいから。」 何気にネックレスに触れた。 凛が消えて暫くは毎日、いや、時間があれば触れて、凛の思念が届いてないか待っていた。 だが、凛は思念を送ってこなかった。死んだと思ってくれ。最後の凛のメッセージ。思える訳が無い。地球上のどっかに捕まって、犯されて弱っていく凛をどうして簡単に諦められる? ふと、触ったネックレスに微かな思念が飛び込んできた。 (蓮、元気?俺も元気。天馬の為に新しいパートナー探して?俺はもう帰れない。) 凛!夜中だったが、飛び起きて健太を叩き起こした。 「凛、凛から思念が届いた!場所、場所分かるか?」 「本当ですか?やってみます。」 俺のネックレスに触れ、サーチする健太。 「ボンヤリですが、暖かい場所ですね。アジア、フィリピンとかその辺りじゃないでしょうか?」 騒ぎに、天馬と泊まりに来てた隆君も起きて来た。 「パパ、明日から夏休みだよ。僕らも探しに行きたい。」 「あぁ、人手がいる。頼むよ。」 ある程度、場所が絞られたら、後はそこに行って、誘拐とか行方不明の事件が多発してる場所を当たれば範囲は狭まる。 「もう、充分、鍛え直したわ。行きましょう。明日、出発よ。」 凛、もう少しだ。もう少し頑張れ。

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