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「ん?……ちょっと茉莉!」
「何?」
智裕に腕を引っ張られ、小声で訊ねられた。
「三葉っつったなあのお友達。」
「うん。」
「まさか…三葉取締役の……。」
「あー…お父さんがオーナー不在時の代行って言ってたような気もする。」
「おまっ…!超お偉い様のお嬢さんじゃねーか!まさか腐った如何わしい趣味を教えたとかねーよな?」
「いや、心愛ちゃん元々腐ってた。」
「ならよし!」
心愛ちゃんのバックが思った以上にでかかったので智裕はビビったようだった。そして耳打ちついでに智裕にもサプライズプレゼントを贈る。
「そうそう、滞在中は私心愛ちゃんと同じ部屋にしてもらったから。」
「は?いやいやいや!選手以外は基本世帯ずつだって聞いてるけど!」
「心愛ちゃんがお父さんに頼んでくれたんだよ。取締役の娘なんだから造作もないわよ。感謝しなさい。」
「茉莉ぃ…お前いい娘になったなぁ…。」
私は智裕とガッチリ握手を交わした。
そりゃ私も初めてのハワイはパパと四六時中一緒に居て、南の島のワイハで美しいパパを目に焼き付けフィルムに焼き付け、ってやりたいけど、出会ってから中々2人の時間っていうのがなかったんだし、今回くらいは譲ってあげよう。
智裕はパパの荷物を1つ持ち、大事な左手でパパの右手を握って意気揚々にホテルに行くバスに向かって歩いた。
「うふふふ…松田トレーナーは本当に茉莉さんのお父様が大好きなんですね。」
「もう16年くらい?経ってるはずなんだけど、超ラブラブ。」
「今回は私もそのラブラブを一緒に観察させていただきますわ。」
心愛ちゃんの目が血走っているのは気のせいではなかった。
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