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裁判記録:だから僕は――②
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僕の名前は、香坂 穣 。そこら辺にある一般企業の会社員で25歳。それなりにイケメン。いい寄って来る女は吐いて捨てる程いるけれど、残念ながら付き合えない。男じゃないと、性的欲求が湧かないからだ。
これは隠してること、その1になるな。
隠していることその2は、僕の従弟があのゲイ能人、葩御 稜 だったりする。
※ゲイ能人、葩御 稜のお話は【毒占する愛】にて掲載中!
僕の母親とアイツの母親が姉妹なので、実際のところ親戚関係に当たる。だけど親戚付き合いは、まったくといっていいほどない。本人に逢ったのだって、小さい頃の数回だけ。記憶だって、ほとんど残っちゃいない。
なのに、血の繋がりはオソロシイ。
ハッテン場に行くと、必ず言われてしまうのが――。
『ねぇ、君ってさ葩御 稜にソックリだね。俺と寝てみない?』
なんていう誘い文句の連続で、正直ウンザリしてしまい、ガックリとうな垂れるしかなかった。
「悪いが僕はタチなんだ。寝ることはできない。アッチに行ってくれ」
そう言って断るのが面倒くさくなり、ハッテン場に顔を出さなくなった。
あんなヤツと繋がってるせいで、思うようにいかない。バレたら間違いなく自分の性癖をアレコレ邪推され、奇異な目で見られるに違いない。
そういうストレスを胸に抱えつつ、ヤリたくてもできない現状は、自分の中に毒を燻ぶらせた。
「ノンケをこっちの道に引きずり込むだけじゃ、つまらなくなったし。今度はもっと、面白い遊びをしてやろうじゃないか」
頭に浮かんだのは、幸せそうな後輩の顔――落とすには、もってこいの相手だった。
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