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相談
「そん時から俺、ずっとてっちゃんのこと好きだったんだなって。……その、藤枝さんたち見てたら、俺もそういう風にてっちゃんのこと……そう気づいた、つうか」
照井がポツポツ語ったのは、小学校3年から三十過ぎた現在まで続いた大鳥に対しての想いである。
「なるほど」
そこまで黙したまま聞いていた藤枝健朗 は、腕組みしたまま、唸るような低い声を出した。
高身長ガタイ良しで顔も怖い、だが実は優しいこの人は昨年、大学時代から付き合いのある男と養子縁組をして名字が変わった。つまり男夫婦として生活する二人を見ていて、自分の気持ちをしっかり自覚したわけだが、どうしたら良いのか悩んだあげく相談に来たのだった。
相方の藤枝拓海 はシュッとし過ぎて、苦手感がどうしても拭えない。そこで健朗一人が家にいるタイミングで来たのだ。
「つまりおまえは、どうしたい」
ひとつ頷いた健朗から低い声を向けられ、照井はめっちゃキョドった。
「ど、……どうって……」
「大鳥とセックスしたいのか」
「……セッ……ッ!」
「したくないのか」
「て、てか、藤枝さんたちも……その、…………してるンすか」
「もちろんだ」
こんな話してるのに照れるでもなく、眉ひとつ動かさない真顔の健朗を、ちょっと尊敬の眼差しで見つめながら、照井は思わず言っていた。
「しっ……したい……です」
「いつからセックスしたい。小学校のときからか」
「えっ、いや!」
「では、いつからだ」
「え……と、その……五年前、この町に、てっちゃんが戻ってきてから……です」
「そうか」
そこで初めて、健朗は、ほう、と息を吐いた。
「ひとつだけ、言っておく」
「あっ、はいっ!」
ようやくアドバイスが聞ける、と背筋を伸ばした照井に、睨むような鋭い視線を向けた健朗は絞り出すような声を出した。
「セックスする前に、きちんと気持ちを伝えておけ」
「えっ!?」
「好意を持っているのだと言うことを、しっかり言葉にすることは、非常に重要だ。……俺は出来なかったが」
そんなのは言われるまでも無い当たり前の事で、むしろどう言えばイイか、そこの所を聞きたかったのだが、思いきりすっ飛ばされた。
「あとは押せ」
「お……?」
「旅行にでも行って、二人になったとき、真剣に頼んでみろ」
「た……?」
「それでダメなら諦めろ」
「……」
「俺に言えるのはそれくらいだ」
ここに至って、相談相手を間違ったことに気づいた照井なのだった。
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