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鰯・柊・恵方巻き【充彦×勇輝】
「ねえねえ、勇輝く~ん。せっかく今日は二人とも部屋でゆっくりしてるんだよ?」
「うん......」
「俺と二人きりなんだよ?」
「うん......」
「一生懸命何やってんの?」
「うん......」
「生麦生米生卵?」
「うん......」
だーーーっ、ムカつく!
ひたすら人の話に相槌だけ打ってりゃいいと思ってる勇輝も、部屋の中に充満する醤油の甘辛い匂いにも、ほんとムカつく。
ただ今勇輝は正月前のおせち作りよろしく、俺の事などお構い無しでお料理の真っ最中。
干瓢を炊き、穴子を丁寧に煮込み、わざわざ鯛を買ってきて桜でんぶを作り、海老のすり身を混ぜ込んだ厚焼き玉子を焼いて。
傍らには、木桶に丁寧に広げられた酢飯。
これを作る時だけは『手伝って~』とニコニコ笑顔で甘えん坊風に言われて、指示されるまま団扇でひたすらパタパタしてたけど。
最高級の板海苔に、巻き簾もとっくにスタンバイオーケー。
既に用意の終わったお重二つの中には、たっぷりと脂の乗った鰯の塩焼きが数匹ずつ詰められている。
そう、日本の伝統文化ってやつにやたらと拘りを持っている勇輝は、節分の準備中なのだ...それも俺の為ではなく、『中村家』と『元村家』の為の。
当然うちの分もあるんだろうが、どう見ても後回しにされてる感が半端じゃない。
おまけに、今は同じマンションに住んでる航生んとこはともかく、わざわざ中村さんまで持っていくのは当たり前のように俺の役目だ。
俺はあくまでも、俺と勇輝で出掛ける時の為に車を買ったのであって、別に使い走りしやすいように買ったわけじゃないのにぃ...のにぃ...のにぃ......
せっかく納車されたばかりの車の助手席には、勇輝よりも先に巻き寿司と鰯が乗るだなんて。
そりゃね、中村さんには散々世話になってるし、勇輝が望むってんなら俺もパシりの一度や二度、なんてことはないよ?
でもさぁ、ちょっとくらい俺にも構って甘やかして、『無理言ってごめんね?』とかチューの一つもしてくれたって、そんなに作業の邪魔にはならなくないか?
さすがにイライラムラムラしてきて、煮上がった干瓢や穴子を丁寧にザルに乗せている勇輝の背後に立った。
「何やってんの?」
もう生返事は許さないと、背後からギュウと抱き締める。
「あ? 具材の粗熱取るのにザルにあけた」
「あのさぁ...よそのお家の為に一生懸命になるのもいいんだけどぉ...わが家の、勇輝の大好きな俺の恵方巻きが可哀想だとは思わない? 昨日からずーっと放置されちゃって、干からびちゃうかもしれないぞぉ」
ふざけた口調で言いながらも、ちょっと切羽詰まって腰を勇輝のケツに擦り付ける。
もう毎度の事ではあるけども、こんな風に気合いを入れた作業に入る前日は『お触り厳禁』だ。
触られると触りたくなるし、しちゃうと次の日疲れて大変だからって理由で。
......疲れて大変てのは否定しないけども。
それでも俺は触りたいし触られたいの!
エブリデイ、エブリタイム、常に触りたいの!
ヘコヘコと腰を振り、唇をうなじに押し当てた。
まあ難しいよなぁと思いつつ、ここで少しは流されてくれないかなぁと淡い期待を持って。
そんな勇輝が、ゆっくりと俺の方に顔を向ける。
なんだかその目がブリザードのように冷たく感じるのは今は気づかないフリだ。
「今、結構忙しいんだけど?」
「知ってる」
「腕、離して欲しいんだけど?」
「うーん...今はちょっと無理かな」
「あっそ...その恵方巻きをどうにかしたいわけだ? まあ確かに、ほっといて干からびるのは俺も困るしね」
おっ!?
意外な反応だ。
なんだかいつもより優しいぞ、口調はちょっと呆れてるっぽく聞こえるけど。
これは強引にでもチンコ擦り付けた甲斐があると......
「仕方ないから、ちょっとこっち来て」
いきなり腕を取られ、無理矢理キッチンから引っ張り出される。
勇輝はキョロキョロと部屋の中を見回すと、何故かテレビの横に連れていき、わけのわからないままの俺を壁沿いに立たせた。
「まあ...この辺だな」
「ん? 何が?」
俺の疑問に答える事もせず、勇輝は無言のまま跪き...いきなり俺のデニムのジッパーを下げた。
「へっ!?」
「いただきます」
それだけ言うとそこから半分だけ『オハヨウ!』なチンコを引きずりだし、前触れも楽しいイチャイチャも何も無くいきなりパクンとそれを咥えた。
「えーーーっ!?」
引こうとした腰を力ずくで壁に押さえつけ、予告も何も無く始まったのは、突然の激しいディープ&バキュームフェラ。
のっけからフルスロットルのその動きに、俺のはあっという間にマックスサイズに大膨張した。
あまりに驚いて、我慢しなきゃとかなんとか考える事すらできず、ただ本能のまま勇輝の口に向かってガンガン腰を振る。
時折奥に当たるのか眉間に深く皺が浮かぶけど、そんな事はお構い無く勇輝は黙々と俺のをしゃぶった...そりゃあもう、超絶テクニック万歳な感じで。
すぐに追い上げられて、トドメとばかりに先端の孔を舌先でクイクイと抉られる。
それはもう、『瞬殺』という言葉がぴったりなくらい...ほんと、あまりの早さに自分でもビックリするくらい、俺は呆気なく勇輝の喉の奥に向かってザーメンを吐き出していた。
ああ、情けなや...この早さはおそらく、俺の人生においての最速記録だろう。
吐精の後の甘怠さに大きく息を吐き、余韻に浸る......なんて事もなく勇輝はあっさりそこから口を離すと、喉奥に溜まった物を当然のようにゴクリと飲み込み、『ごちそうさま』と何事も無かったように手を合わせた。
いやいや、お掃除してよぉ...せめて、まだちょっとだけ残ってるやつチュッてしてぇ。
それがダメなら、せめてどうかこの早漏チンコが風邪引かないようにデニムの中に片付けてくれ。
「ほら、恵方巻き片付けてやったから文句ないだろ。今年は北北西向いて...だしな」
あ、この壁がだいたい北北西方向なのか、なるほどなるほど...ってか、ほんとに丸かぶりしてたのかよぉ。
だから無言だったわけね。
「望みは叶えてやっただろ? なんか文句ある?」
「......無いです」
ほんとはあるけどな!
無言でフェラとか、なんも楽しくないんじゃ!とか。
......いや、楽しくはなくても気持ち良かったけど。
「んじゃもう邪魔するな。とにかく先に中村さんとこの準備するから、出来たら急いで持ってってきて」
「......はい」
早すぎた自分の不甲斐なさに、言い返す気力も無い。
「うち用には丸かぶり以外にも、ちゃんと牛しぐれとかイクラとかの巻き寿司も用意するから」
急に優しくなった口調に、慌てて勇輝を見る。
ニコリと笑うと、まだテロンと放り出されたままだった俺のチンコをツンとつついてきた。
「早く食べて、今度はこれ、俺の中で丸かぶりさせてね?」
「おうっ! 任せとけ!」
まったく現金なもので、俺のテンションはそれだけで一気に上がった。
早く出来上がらないかなぁと車の鍵を指でクルクル回しながら勇輝の手で見事に巻き上がる寿司を見ているだけで、また俺のチンコはムクムクしてきた。
ああ、節分も悪くない。
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