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第3話

「…っあ、ん、んぅ…」  駅の外れにある人気のないトイレから、甘い声と水音が響いている。  一番奥の個室には、少年が二人。  トイレの仕切りに押し付けられた俺のぐちゃぐちゃになったアナルからは、三本の指が抜け、片足を持ち上げられる。 「祐太、挿れるよ……?」 「ま、待った、こん…ぁあ、ひぅ…っ」  耳元で紺野の熱っぽい声が囁くと、指が抜け物足りなさそうにしていたアナルに熱いものが、俺の抵抗虚しくずぷぷっと入っていく。  中に完全に入った熱い紺野自身は、内壁を抉るように擦りながら出入りを始める。 「あ、あっ、うぅ…んあっ…」  壁に背を付けているため、律動に合わせて、繋がったトイレの個室のドアがガタガタと鳴る。  一時間ほど前までは、ゲームセンターに紺野と行き、ゲームを思う存分楽しんでいた。しかし、ゲームセンターの近くの駅に寄り、ファーストフードで小腹をみたそうと向かっていると、また、胸に異変が起こったのだった。  紺野にこのことを言うと、駅の人気のないトイレと連れて来られて、今に至る。  二週間前の空き部室での一件以来、胸の異変が起こったら紺野に『手伝い』をしてもらっていた。  数日、一人で処理をしていたが、もやもやが募っていくばかりだった。それを紺野にばれ、さらに詰め寄られた。結局、 あの時、意識が朦朧としていたとはいえ、自分で諾と言ってしまったため、詰め寄られると断るにも断れずに、紺野に『手伝い』をしてもらっている。 ――ずぷっずぷっ、ぬちゃぬちゃ  体内を熱くて硬いものが出入りする度、甲高い声が漏れてしまう。 「あっ、あっ、あ……っ、んあっ!」  すると、母乳を滲ませ、じっとりと濡れている乳首をしゃぶられる。  舌で、転がすようにされ、歯を立てられると、理性はどんどん溶けていき、何も考えられなくなる。  もの寂しさを覚え、縋るように紺野の首に腕を回す。 「…ん、あっ、も、もう、イ…くぅ」 「いいよ、イって」 「…あっ、ああああっ!」  紺野が言うと、一際強く乳首を吸い、俺は乳首と自身から白濁の体液を放った。  イった時にアナに力が入ったことにより、紺野が中で熱いものを吐き出した。  腹を空かせた俺たちは、元々向かっていたファーストフード店へ行った。  数回このようなことをしているが、事後の気まずさには未だ慣れない。そして、いつもの調子の紺野に釣られて、俺も普通に話しているのも、いつものこと。 ***  腹を満たした後、じゃあなといつものように紺野と別れ、コンビニに立ち寄る。  今日発売した漫画雑誌を立ち読みし、パンを一つと飲み物を買って、外に出る。  自動ドアをくぐってみると、道路にポツリポツリと空からの雫でシミができていく。 「まじか……」  首の後ろをぽりぽりと掻き、呟く。  今 コンビニでビニール傘を買うと、今月のお財布がさみしくなってしまう。  またコンビニの中に戻るのも、日本人の性と言うべきか、戻りにくい。  雨宿りをしても、コンビニの軒先は狭く、結局雨に当たってしまうのだ。 「しかたない!」  まだ雨脚も強くないため、そのまま帰路につくことにした。  迷っている間に、強くなっちゃうよな!  痛む腰を摩りながら、ぎこちない小走りで家へと行く。 *** 「うぅ……寒い……」  放課後、図書委員の仕事をするために図書室の受付に座り、 両の二の腕を摩り、僅かな熱を作る。  隣では、紺野が本の貸し出しや返却の為に、備え付けてあるパソコンを起動させた。  昼休みが終わったあたりから、少し肌寒いと思っていたが、時間が経つにつれ、寒さが増している気がする。 「裕太、そんなに寒いの? 風邪じゃない?」 「うん。寒い……風邪かな?」  冬に近づいていることもあり、ワイシャツの上にカーディガンを着ている。さらに、その上に学ランだって着いてる。  三枚も着ているのに、なぜこんなに寒い!? 「今日は暖かい方だから、寒いってほどじゃないよ。他に上着とかないの?」 「これで大丈夫だと思って、持って来てこなかった……」 「あ、俺のカーディガンあるから、教室から取ってくるよ」 「紺野、ありがとう」  待っててと紺野は、足早に図書室から出て行った。  目の前に並ぶ本棚をぼーっと見つめながら、三日前に雨に打たれながら、家に帰ったのが悪かったかもしれないと考えてみる。  はっ!  いやいやいや、ここで風邪をひいて学校を休むなんてことは、出来ないんだ!  皆勤賞を貰えなくなってしまうじゃないか! 「何、面白い顔してんの?」  突然頭上から声をかけられ、顔を上げてみると、見知った人物がいた。 「なんだよ!  晃(ひかる)かよ! 知らない人に変な顔って言われたのかと思ったわ!」 「知らない人に、変な顔してるねなんて言う人、そうそういないから」  相変わらず、裕太は面白いなとクスクス笑っているのは、一年生の時に同じクラスで仲の良かった竹澤 晃(たけさわ ひかる)。 「晃は、なんでここにいるんだ?」 「ちょっと、生徒会での調べ物に来たんだ」  手に持っていたファイルと筆箱を見せながら、苦笑する。 「生徒会って、大変なんだな」 「まあね。でも、メンバーは面白い奴ばっかりだから、俺は楽しいよ」 「ふーん。晃が、楽しいなら良いことだな」  生徒会って、大変なんだなぁとしみじみ思っていると、晃の手が伸びて来た。 「睫毛とれてる」  冷たい晃の親指の指先が、ゆっくりと目元を撫ぜて行く。 「んっ……」 「よし、取れた」 「ありがとう」 「どういたしまして」  入口の方から強い視線を感じ、振り向いてみる。 「紺野、おかえり」 「久しぶり。紺野」 「祐太、ただいま。……なんで、竹澤が居るの」  晃に目を向けたまま、俺の隣に来た紺野は、手にしたカーディガンを背中にかけてくれた。そして、さっきまで座っていた椅子に腰を下ろした。 「生徒会の調べ物しに来たら、裕太が百面相してるの発見して、久しぶりって声かけたんだよ」 「晃が、俺の考えてる顔面白いって言うんだぜ!? 酷いよな!?」 「……」 「いい意味で、面白かったんだよ。あ、そろそろ仕事してないと、後から来るって言ってた生徒会長様に怒られるから、またな」  ひらりと手を振って、晃は本棚の間に消えていってしまった。 「……」  紺野は、晃が去っていった方をじーっと見つめていた。  紺野の横顔と視線の先を交互に見ていると、 「裕太、カーディガンちゃんと着た方がいいよ」  紺野はさっきまで、眉間に寄せていた皺を戻していた。  そして、肩からずり落ちそうになっていたカーディガンを、俺が袖を通すのを手伝ってくれた。 ***  やはり、風邪だったようだ。 「部屋に着いたよ。少し立てる?」 「……うん」  よいしょと、おんぶをして部屋まで連れてきてくれた紺野の背中からゆっくりと降りる。そして、身体が重く、耐えられずにベッドの上に座る。  風邪をひいてしまったと自覚してしまうと、だんだんと身体が重くて熱く感じ、頭痛もしてきた。 「じゃあ、制服脱いで」  指示に従い、制服を脱ぐ。 「はい、これを着て」  今朝、ベッドの上に脱ぎ捨てたスウェットを手にした紺野に手伝ってもらい、それを身にまとう。  ドクドクと脈打つように、頭に痛みが走る。 「そしたら、これ飲んでね」  部屋に来るまでの間に、寮母さんから貰った市販の薬とコップに入った水を渡される。  薬を飲むのが苦手な俺は、顔を顰めるが、これを飲まないと治らない。つまり、これを飲まなかったことで、悪化して、最悪死んでしまうのだと、自分に言い聞かせ、意を決して薬を胃の中へ流し込む。 「……っんん……はぁ……」  いい子、いい子と頭を撫でる紺野に、布団の中に入るよう促される。  促されるまま入ると、布団の冷たさが心地よい。 「紺野……」 「ん、何? あ、冷えピタ貼るよ」  前髪を上げ、冷たいジェルが額に貼られる。  その冷たさに、少し身を竦めてしまうが、気持ち良い。 「ンっ……紺野は、もう帰るの? ……もう少し、居れないか?」  額から離れていく手を捉えて、尋ねてみる。 「居るよ。祐太が寝るまで、側に居るよ」 「ありがとう、紺野」  掴んだ手がギュッと握り返してくれた。 「ここに居るから、安心して寝てよ。早く元気になって、ゲームしに行こう」  頷くと、握ってくれている手に安心し、眠りに落ちていった。 ***  学校を休み、朝一番に保健室の先生が、病院に連れて行ってくれた。熱は、だいぶ下がっていたけれども、大事を取ってとのことだった。  昨日、病院が休診だったため、思っていた以上に混んでいた。そのため、部屋に戻ってきたのが、十一時半を少し過ぎた頃だった。  胸に異変があることを病院の待合室で気付いた。しかし、いろんな人に知られるという恥ずかしさが勝り、どうしようと焦っていたが、先生がおじいちゃんだったお蔭で誰にも気づかれずに済んだ。  バレなかったことにと安心しながら、寮母さんが持ってきてくれた温かいお粥を口に運んでいると、静かな部屋に着信音が鳴り響いた。 『もしもし。祐太、体調どう?』 「まだ怠いけど、だいぶ治った感じ」 『それは、良かったよ』  電話からは、紺野の安心した声と昼休みの喧騒。 「き、昨日は、一緒に居てくれて……ありがとな……絆創膏も変えてくれた……みたいで……」  恥ずかしさで、徐々に声をくぐもる。身体が熱くあり、胸がじーんとする。  いくら風邪をひいていたとはいえ、手を繋いでもらって寝るとは、高校二年生にもなってすることではなく、今思えば恥ずかしいことをお願いしていた。  朝起きると、胸の絆創膏が変えられていた。きっと寝ている間に紺野がやってくれたのだろう。 『ああ、大丈夫だよ。寝てる祐太、可愛かったし』  全然気にしていなく、むしろ寝顔を見て楽しんだと詳しく話し始める紺野。聞いていられず、ストップをかける。 「や、やめろ! よだれ垂らして寝る野郎なんて、可愛くないだろっ!」 『えー、可愛いよー』  すると、楽しそうに笑っている紺野を呼ぶ松岡の声が、電話の向こうから聞こえた。 「……ん? え、バスケ部部長? 分かった、ちょっと待って! 祐太、ごめん。呼ばれたから、切るね。今日もお見舞い行くから! じゃあ。」  一息に言うと、返事も待たずに切れてしまった。  バスケ部部長と言っていた。きっとこの前助っ人を頼みに来た彼だろう。紺野は、嫌だと言いつつ受け、来週の土曜日に練習試合をするとか言ってたっけ。  茶碗を食堂に返しに行き、部屋に戻ると、貰ってきたばかりの薬を眉間に皺を寄せながら飲み込む。ベッドに潜り込み、携帯電話を見ると、通知はなし。 「……寝よう」  ため息混じりに言いながら、携帯電話をベッドボードに置き、寝返りを打つ。  さっき紺野は、今日も来ると言っていたけれど、風邪っぴきの部屋に入ってこれるのだろうか。  たしか、寮のきまりで、風邪を引いた者の部屋には誰も入れないと書いてあったはず。  紺野も無理だと知れば、来ないはず……  胸が痛い。いつもと違った痛み。  乳首じゃなくて、心臓が――  これは、きっと風邪を引いている時の独特の寂しさのせい。  そう自分に言い聞かせながら、小さく丸まり眠りに就く。  胸の疼きを、一人でどう処理すればいいの、紺野。 ***  意識がフッと浮上する。  目を開けると、あたりは薄暗くなっていた。  だいぶ体は、スッキリして軽くなった。  携帯電話の通知を確認するが、寝る直前と全く同じ。  まあ、そうだよな。寮母さんにこの部屋へ通してもらえるわけがない。バスケ部の練習だってあるだろうし。  掛け布団を顔の半分を覆うくらいまで引きながら、寝返りを打つ。 「はぁ〜」  紺野は来ないと思っていても、実は期待していたようだ。なんで来てないんだよとイラッとするし、寂しくもある。 「うっ」  身体を横にしたことで、胸元を液体が垂れていくのを感じる。  襟口から覗いてみると、胸から絆創膏のガーゼでも吸収しきれなかった白い液体がつぅーと筋を作っていた。 「交換しないと」  できる時にしておかないと、また具合が悪化して何もできずに、誰かにばれてしまう危険がある。  立ち上がろうと、床に片足をつける。すると、 「祐太起きたの?」  声のした方を向くと、いるとは思ってもみなかった彼がいた。 「こ、紺野!」  俺の机に座り課題をやっていたようだ。字を読んだり書いたりするときだけ掛けるメガネをしている。 「具合どう?」 「だ、だいぶ良いよ」  いるはずのない紺野を目の当たりにして、立とうとしていたことを忘れて座っていると、良かったと頭を撫でられる。 「冷えピタ貼り変えてあげるよ」 「ありがとう。って、どうやってここに入ったんだよ!」 「病人の部屋には入れないって聞いたことがあったから、窓の鍵開けて昨日帰ったんだ。祐太、昼でもレースカーテンひいてるからばれないかなーと思って」  バレなくて良かった~とのんきに言いながら、紺野は俺のおでこから冷えピタを剥がし、新しいものの透明フィルムを剥がす。 「お前、それって不法侵入ってやつじゃ」 「冷えピタ貼るよ」 「っう、冷た……」 「まあ、まあ。こうしてお世話してもらえて、何かと楽でしょ?」  差し出されたのは、スポーツドリンクのはいったペットボトル。 「あ、ありがとう」 「俺が、お世話したかったってのもあるけど。ところで、どこに行こうとしてたの? トイレ?」 「いや、その……絆創膏変えようと思って――」  異変のある胸を見ながら言うが、最後の方はほとんど消えそうな声になってしまう。いくらこの二週間、『手伝い』をしてもらっていても、恥ずかしいものは恥ずかしい。 「俺が交換してあげるよ」 「うわっ!」  そう言うと、俺の肩を押して布団に寝かせ、救急箱から絆創膏を取りに行く。ついでに、メガネを机の上に置いてきたようだ。 「ちょっ、自分でやるから――」  上半身を起こして抗議すると、まあまあと俺に跨ってきた紺野に肩を押されてしまった。 「俺が『手伝い』してあげる」  そう言うと、俺の手早くスウェットを捲り上げる。  垂れた母乳が外気に触れたためにか、紺野の言う『手伝い』に期待したのかビクリと身体が震える。 「わあ、すごいね」  紺野は、冷たい手で腰回りをさわさわと撫でた流れで、濡れているのも気にせずに乳首を避けながら胸を撫でる。敏感なとこを触られているわけではないが、腰が動いてしまう。そして、母乳のせいで殆ど剥がれている絆創膏を、うっとりしたような顔で剥がしていく。 「っく……」 「はい、拭くよー」 「へ?」  ベッドボード上の箱からティッシュペーパーを取ったと思うと、濡れている胸をそれで拭かれる。  優しく乳首に触れないようティッシュペーパーが肌を這う。 「病人は、安静にしてないとね」 「あ、ああ……そうだな……」  今までの『手伝い』と同じようなことをされると思っていたため、何もしないことになり驚いていると、下腹部を触られる。 「でも、ここは元気みたいだね」 「うっ……ち、違う!」  違うと言ってみたものの、撫でられている自身に目を向けると、もっと紺野に撫でてもらおうとして、どんどん服を押し上げている。 「じゃあ、もう少し手伝ってあげる」 「えっ」  抵抗する前にズボンと下着を一気に取り払われる。そして、起き上がっている自身を手で包まれ、上下に擦られる。 「っ、やぁ……こん、の、まっ……っあぅ」 「そんなこと言って、俺の手に擦ってもらおうと腰動いてるよ」 「んな、っあ……ことないっ……」  俺自身を包んでいる紺野の腕にやめるように掴んでみるが、風邪も相まって全く力が入らない。  自分から腰を動かしていないと頭を横に振ってみるが、尚強く握られて擦られる。  紺野の手が離れたと思うと、カチャカチャという音と布が擦れる音がした。 「裕太、俺のも手伝って……」  俺自身に当てられた、熱くて硬いもの。  今度は、紺野自身と一緒に大きな手に包まれる。 「うぅ、なんか熱いよぅ……」 「うん、うん。ごめん」  そう言うと、重なった自身たちを擦り始め、乳首に舌が這っていく。 「ひゃ、っあ……吸わ、ないで……」 ――ちゅうぢゅう、ぬちゃぬちゃ  舌で遊ばれていた乳首は、乳輪ごと紺野の口の中へ迎えられ、強く吸われる。  シーツを掴んでいた俺の片手は、自身たちを一緒に包むように招かれる。そして、紺野と一緒に、先走りで滑る自身たちに刺激を与えていく。 「っ、んっ…はぁっ、あっ……んんっ」  外に出ようとする欲望に腰を浮かしてしまうと、同じく欲望を吐き出そうして腰を突き出している紺野と互いの自身をより強く擦り合わせることになってしまう。そうすると、さらに欲望が外へ出ようとし、包み込んでいる手の動きが激しくなっていく。 「こ、んのぉ……うし、ろっ、あぁ、も」 「ここ?」  紺野の指がアナルを数回擦り、垂れてきている先走りを使い中へ侵入してくる。長い紺野の指は、ぐちゃぐちゃと音を立てながら中を擦り、慣れた手つきで前立腺を見つけ出し、執拗にそこを攻めてくる。 「そ、こ……ひゃあ、っん、ふう、あっ……も、もう、っあ、イ、イくっ……」 「んちゅぅ、ぷあっ。……俺もっ……イこう、一緒にイこう」  再び紺野の口腔に迎えられた真っ赤な乳首。吸われながら、一番敏感な乳首をれろれろと舐められる。 「あっ、ん、イくっ、イくっ…ひゃ、あああっ!」 「っ、ちゅ…ん、ふっ……っくう!」  乳首を噛まれ、アナルでは前立腺を擦りあげられ、同時に責められたことより、限界へと達してしまった。  紺野も一緒に達したようで、二人分の白濁とした体液が上下する俺の腹の上に付着している。  自身と一緒に胸からも白い母乳が吹き出す。これは両方から出る全てを紺野が嚥下してしまった。 「あとは、俺がやるから祐太はゆっくり寝ていいよ」  まだ少し息の上がっている紺野が、おでこに優しくちゅっと唇を当ててくる。反射的に目をつむってしまう。  だいぶ良くなったとはいえ、ダルさが残り、体力の落ちている身体は、もう動きたくないと言っている。紺野の言葉に甘え、重い瞼をそのまま閉じ、眠りについた。 *** 「失礼しました~」  休んでいた分の課題プリントを持ち、職員室から退出する。  火曜から木曜まで三日間も部屋で安静にしていたため、今ではもうすっかり元気である。紺野が毎日身の回りのお世話をしに不法侵入をしてまで来てくれていたおかげで、以前の世に母乳は出るが胸が張って痛いということもなく、復帰できた。  しかし、狙っていた皆勤賞は無きものとなってしまった。狙ってたのに、くそぅ!  放課後で校舎に数人しかいない廊下を、プリントの内容を見ながら行くが、どうも分からない。一番苦手な数学の担当の先生に、休んでいる間も進んだ部分を教えてもらったが、実にちんぷんかんぷんだ。これを、週明けに提出しないといけない。  数教科分あるため、いつも机に置いて帰っている教科書を何冊も持って帰らないといけない。  風邪を引くと治ってからも大変だ。こんなに大変なのは、もう遠慮したい。  戻ってくると、教室には誰もいなかった。時計を見ると、最後の授業が終わってから一時間半経っていた。  ため息をつきながら、帰りの準備をたらたらと始める。  いつもなら戻ってくるまで待ってると言うだろう紺野は、来週のバスケ部の助っ人のため練習に渋々行ってしまっていない。  俺が学校を休んだ初日、練習を無断でさぼって来たらしく、部長さんに怒られたようだった。翌日からは、練習後疲れているはずなのにわざわざ世話をしに来てくれた。もちろん、不法侵入して。部屋にいる間、そんなことまでしなくていいと言うことまで、身の回りを全部世話してくれた。もちろん、『手伝い』も。  恥ずかしいけれど、前から『手伝い』をしてくれているのは、正直一人じゃ心細かっただろうし、今までやり過ごせてなかっただろうし、とても助かっている。  だから、今度何か奢ってやろう。 「また百面相をして、どうしたんだい? 祐太くんよ」 「うわ! 晃! 何でここに!?」  横から突然声をかけられ、思わず椅子から落ちそうになる。  声の主は、ニコニコ笑っている。 「そんなに、驚かなくても。いつもの生徒会終わりに、見かけたから」 「いやいや、全く気配なかったから」  毎度、晃は突然現れる。そろそろ、こいつは忍者なのではないかと疑うほどに、気づいたら近くにいるのだ。 「生徒会は、いつも大変だな。って、お前、楽しんでるだろ」 「そんなことはないよー」  口では、そう言っているが晃は、ニヤニヤしている。  そして、このやり取りのデジャブ感が凄い。 「それより、風邪で休んでたんだってね。もう大丈夫なの?」 「具合は、もう大丈夫! でも、休んでた分の課題は大丈夫じゃない……月曜にすべて提出なんだ……」  いつもテストで学年トップ5位内にいる晃くんに、教えてもらおうと、真下からうるうるさせた目で見上げてみる。 「晃くん……!」 「んー、手伝ってあげたいのは山々なんだけど、土日は部活があってね」 「そっか……あ、紺野はどうだろう」  いつも俺と遊んでいる気がするけど、紺野もなかなか成績優秀だったりする。  でも、紺野もバスケ部の練習かな? 後で、一応聞いてみよう。 「祐太は、紺野好きだよね」 「あいつ、良いやつだよな」  仲良くなるまでは無愛想だが、本当は世話焼きなのだ。あれ、他の人に世話を焼いているところを見たことがないぞ。  いや、そんなことないはず。今だって、母乳が出るようになってしまった俺のことを引かないで、今まで以上に世話を焼いてくれて、さらには『手伝い』までもしてくれているし。  『手伝い』で行われることを思い出して、恥ずかしさに顔に熱が集まってきてしまった。  熱くなった顔がばれないように、いそいそとリュックのチャックを閉めると、晃に片腕を引っ張られた。 「っう。なんだよ、ひか」 「ねえ、俺は? 俺じゃダメ?」  引っ張られたことでバランスを崩した俺の腰を、晃はもう一方の手で支えてくれた。  しかし、腕と腰を引かれたため、身体同士の距離が殆どなくなってしまった。見上げた顔も息がかかりそうなほど近い。  甘いマスクで多くの女子のファンを持つ晃。普段とは違って真剣な眼差しでこちらを見つめてくるが、整った顔立ちには変わりない。そんな、晃をこんな近くで見つめられてしまうとたじろいでしまう。 「え、ちょ、晃のことも嫌いじゃないけど、俺じゃダメって」  どういうことと、続けようとしたのを遮られてしまった。 「俺、祐太のこと好きなんだ。友達ってことじゃないよ。こういうことを、したくなる好き――」  唇に温かくて柔らかいものの感触を感じた。 「んん!? っあ、ひ、晃、ちょっとま、んむ、ふぁ」  すぐ頭を後ろに引いて離れるが、抗議する間もなく再び唇を奪われる。  逃げないようにと腰にあった手は、後頭部へと移された。そして、離れたときに開いていた唇の間から、ぬるっと舌が侵入してきた。  晃の舌は、口腔内を執拗に這いまわり、俺の舌に絡みつき、音を立てながら痺れそうになるくらいしゃぶられる。  ちゅっと唇が離れていくと、口の端からどちらとも分からない涎を垂らしながら、不足していた酸素をはくはくと取り込んだ。 「もっと、したい。ここも、ここも可愛がってあげたい……」 「っ、うぁ……や、やめっ」  そう言いながら、自身をさわさわと撫で、後ろに這って行き尻を揉んでくる。 「ここもたっぷり弄って、吸って、舐めて――」 「ひゃあぅ!」  尻から敏感な胸へと手が移動し、つい甲高い声を漏らしてしまった。  俺の弱いところを見つけた晃は、そこばかりを執拗に揉む。 「っや、あぅ、やめ――」 「紺野の方がいい? ――ねえ、俺じゃダメ?」  疼きが大きくなっていく乳首に気を取られていると、耳元で囁かれる。 「やっ!」  晃の胸を思いっきり突き飛ばし、リュックを片手に教室から逃げる。  ジクジクと痛いような痒いような感覚のする乳首からは、母乳が垂れている。いつもならトイレへすぐ駆け込んで処理をしないといけない身体だが、今は頭が真っ白でただただ廊下を走った。

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