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お題/ソフトクリーム

~ 総一郎 × 蹴人 ~ 夏真っ盛りで毎日死にそうだ。 自分の家に居る時はセミの大合唱が一日中続いているが、流石はタワーマンションだ。 セミどころか蚊に悩まされる事もない。 俺は今、八神の家に来ている。 扇風機に窓全開な自分の家に比べ、ココにはクーラーがある。 快適と言えば快適だが、八神の家に来る=もれなくセックスが付いてくるというわけだ。 しかし、夏に弱い俺としては涼めるだけで有難い。 「蹴人、少しクーラーが効きすぎではないかな?冷やしすぎるのは身体に良くないと思うのだけれど…」 「少しくらいいいだろ。」 「一度切るよ?」 八神がピピッとリモコンを鳴らしクーラーを切った。 一瞬にして冷んやりしていた部屋が暑くなった。 「おい、お前マジで切ったな!」 「蹴人に風邪を引かせたくはないからね。」 「余計なお世話だ。」 「蹴人、ソフトクリームを買ってあるのだけれど食べるかい?」 ホントはアイスキャンディの方が有難いが、この際冷たいものならなんでも構わない。 「食う。」 「待っておいで。」 「あぁ。」 八神がソファーから立ち上がった。 キッチンに向かい冷蔵庫からソフトクリームを持って戻ってきた。 八神は甘やかし上手だ。 甘やかしに甘やかして、最終的に優位な位置に居る。 「はい、どうぞ。」 手渡されたソフトクリームは、高級品かと思えば普通にコンビニでも買える庶民的なものだった。 八神は金持ちボンボン社長のクセに庶民派だ。 上等なスーツを着込み、高級車を乗り付け、格安スーパーでおばちゃんたちに交じってレジに並ぶらしい。 想像しただけで笑える。 颯斗から聞いて、コンビニで立ち読みした週刊誌の記事を読んで爆笑した。 「んー、サンキュー…」 俺は半分死にかけながらソフトクリームを受け取って、ゴミを八神に渡した。 八神はといえば、当たり前のようにそれを受け取ってゴミ箱に捨てた。 一口食べると、冷んやりした感覚が口の中に広がって少し生き返った気がした。 生き返ったのも束の間、部屋の暑さですぐに溶け始めた。 溶けたソフトクリームがコーンを伝い、指を汚す。 次から次に指を伝うそれを舐め上げた。 ふと八神と目が合った。 「…」 「食い難いから止めろ。」 熱視線… これは完璧にアレだ… 身の危機を感じた時にはもう遅かった。 身体に重みを感じて、部屋の空気が更に熱を持った気がした。 いや、これは八神の熱だ。 「…蹴人…」 声が一際甘い… 「…暑苦しい。」 「…暑い時にはね、冷たい物よりも温かい物の方が身体にはよいそうだよ?…」 「知るか!」 「蹴人、ソフトクリームが溶けているよ…」 八神に気を取られてる内に、それが腕まで伝っていた。 その腕を八神が掴んで、それを舌先で舐め上げた。 「…ッ…バカ、よせ…」 舌の感覚をすっかり覚え込まされた身体が震える。 八神はすっかりご満悦の様子だ。 悔しくて睨み付けた。 「蹴人、その表情が逆効果であるという事を、君はいつになれば理解できるのだい?…それとも、わざとなのかい?…」 リップ音立てながら唇が這い上がる。 俺は八神のキスと甘い声に弱い。 甘ったるい声とキスの一つでもあれば悔しいが簡単に流される。 結局、ソフトクリームが溶けきってコーンだけにまで俺の腕を舐めて続けた。 それを拒否もせずに許す俺はどうかしている。 「おい、いつまで舐めてるつもりだ。」 「ソフトクリームと共に、君がが溶けてしまうまで…かな?」 「…バカか。」 俺の顔を見れば分かる筈だ。 俺が、もう流されている事くらい… どこまでも腹が立つ奴だ。 しつこく腕を舐め上げる八神に焦ったさを覚えた。 空いている指で八神の唇をなぞって、俺なりの精一杯で強請った。 俺から強請るなんて、きっと暑さで頭がバカになっているに違いない。 「どうしたのだい?…ふふ、唇に欲しくなってしまったのかい?」 「ッ~…死ねッ!」 「蹴人、君のその言葉は特別だという事を、俺は理解しているよ。」 汗をかいてるし、シャワーの一つも浴びたいところだが、この後になにが待つのかを俺は知っている。 アイスと八神の唾液でドロドロになった腕を八神の首に回して引き寄せて自らキスをした。 「…ッ…!!」 結局、俺がリードしたのはこの時だけで、この後変なスイッチの入った八神に散々気持ちよくされた。 「…暑い…八神、…クーラー…」 変なスイッチが入った八神に連れていかれた寝室のベッドの上で、俺は完璧に潰されてへばった。 髪を撫でながら、俺の頼みを聞き入れた八神がクーラーを入れた。 徐々に涼しくなっていく部屋の中で八神の手の平の熱を感じる… 正直それが嫌いじゃない。 この手のひらと指と唇と声に甘やかされて今の俺たちの関係が成り立っている。 結局のところ、八神の全てに流されている。 ホント、腹立つ… 「蹴人?…眠ってしまったのかい?…ふふ、可愛らしいね、君は…」 俺は、八神の甘ったるい声を聞きながら、その指に甘やかされながら意識を手放した。 - end - 真夏の二人です。 なんだかんだラブラブなのでした。 みつき。

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