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お題/家族プール

~嵐 ×テツ太 + 愛実 ~ とある真夏日の休日、愛実に強請られて某遊園地のプールにやってきたわけだが、凄い人と暑さに酔いそうだ。 「しかし、暑いな…」 「当たり前だ。今日は今年一番の猛暑らしい。」 「ぱぱ、ぷーる!」 ランに抱かれながら、愛実は久々の三人での外出に大はしゃぎだ。 こんなに楽しそうにされると父親としては連れてきた甲斐があると思うのは当然の事だ。 「愛実、パパとランから離れたらダメだぞ?」 「はーい!」 我が娘ながら素直ないい子だ。 「マナはいい子だからダメって言われた事は絶対しねぇよ。なぁ?マナ。」 「うん!」 「おいラン、あんまり愛実にいい子いい子言うな。プレッシャーでグレたらどうする。」 「それくらいじゃグレねぇって。つか、お前も結構"いい子"って言ってるからな?」 じっとりランを見ると愛実が頬を膨らませた。 「むー。ぱぱもらんもけんかやーの!」 「なぁ、嫌だよなぁマナ。パパが悪いんだぞ。」 「ラン、お前愛実を味方に付けようなんてズルいぞ!」 「さぁ、何の事だか。」 「もー、やーのー!」 愛実がランの腕の中で足をバタつかせた。 「痛ぇ痛ぇ、蹴るな、マナ。」 「やーのー、らんきらいっ!ぱぱもきらいっ!」 愛実がグズリ出して俺とランの言い合いは終わった。 「マナ、アイス買ってやるからグズるな。」 「あいす!まなあいすたべたい!」 ランの言葉に愛実が目を輝かせた。 「テツ、お前は場所取りな。」 「了解。場所取ったらメールする。」 「おー。」 ランと別れて人がごった返すプールサイドで場所を探した。 ランは人混みが苦手だ。 無理をしているに決まっている。 それでも"テツとマナの為だ"と言って付き合ってくれるランはいい男だ。 そんな事を考えながら、なんとか日陰の場所が取れて、シートを敷いた。 早く愛実が戻らないかと思うような大人が一人で座るには恥ずかしいシートだ。 あの国民的人気キャラクターの赤いリボンをしたネコのシート… 通り過ぎる人の視線が刺さる… 俯いてランにメールを打った。 ーーー 「あの。」 暫くすると声を掛けられた。 ゆっくり顔を上げたが、光が眩しくてその相手の顔は見えなかった。 二人組で、女性だという事は分かった。 「…?」 ーーー 「わ、やっぱりイケメン。」 ーーー 「声かけてみて正解だったね。」 「えーと…」 知り合いか… 店の客か… もしくは逆ナンか… いや、アラサー相手に逆ナンはあり得ない。 ーーー 「あの、お一人ですか?」 「いや…」 ーーー 「彼女さんと?」 「いや、彼女じゃないけど。」 彼氏と娘と一緒… とは流石に言いにくい。 ーーー「やった!」 ーーー 「誘っちゃう?」 ーーー 「そうしよ!」 彼女達はなにやらコソコソ話していた。 おかしい… 声が遠い… ーーー 「あの、よろしければ一緒に遊びませんか?」 頭がボーッとする… 「遊ばねぇよ。そいつ、俺のツレだから。」 あぁ、この無愛想で無駄に低い声はランだ。 この声はすぐに分かる。 ーーー 「ひっ!」 「こいつ、気分悪いっぽいから、どいてくれ。」 愛実を抱いたランが二人の間をすり抜けた。 そして彼女達は逃げるように去って行った。 馬鹿だな。 ランは俺なんかよりずっといい男なのに… 顔は怖いがおっとこ前だし、炊事洗濯掃除は完璧だし、スタイル良いし… まぁ、それなりに優しいし… 「ぱぱ!!らんがいちごのあじくれたー。」 「…んー、あぁ、良かったな、愛実。」 「うん!!」 「マナ、そこ座って食ってな。」 「はーい!」 愛実はシートに座って上機嫌でかき氷を食べ始めた。 「ったく、世話がやける奴…」 「…悪い。」 「只でさえ暑いの弱いくせに、無理するから体調崩すんだろうが。」 「仕方ないだろ、先週からずっと愛実に構ってやれてない。それに体調が悪いわけじゃない。少しボーッとしてるだけだ。」 「暑さにやられたんだろ。」 「多分な。」 「テツ、取り敢えずコレでも飲んどけ。」 ランが冷えたペットボトルをコツンと俺の額にあてた。 暑さのせいだけじゃない。 この時期、俺は身体のバランスを崩しやすくなる。 アイツの命日が近い… 今の俺には愛実もランも居る… 分かってはいるつもりだ。 いつまでも死者に囚われているわけにはいかない事くらい… 「ん、サンキュー…」 俺はそれを受け取ってキャップを開けると喉に流し込んだ。 「テツ、俺も喉が渇いた。一口くれ。」 「自分の買わなかったのか?」 「あぁ、それ一本だけだ。ペットボトルに300円とかあり得ないだろ。」 ペットボトルを渡すとランがそれを飲んだ。 「マジか!?」 「ま、一本しか買わなかったのには他の理由もある。」 「なんだ?」 「間接キス。」 耳元でランの低い声を聞いた。 そこがチリチリと熱い… 「馬鹿、いいおっさんがくだらない事を言うな!」 「若い頃にしたかったけどできなかったからな。そのロスタイム取り戻そうと思ってな。」 「…それ言われたら何も言い返せなくなるだろ。」 思わず苦笑した。 ランは出会った当初から俺を見ていたらしい。 でも俺には夏実が居た。 夏実ばかり見ていて、ランの気持ちには気づいてやれなかった。 「若かりし日の願望を全部叶えさせてもらうから覚悟しとけ。」 「ったく…」 「ぱぱ、らん、ぷーるいこっ!」 かき氷を食べ終えた愛実がプールに入りたいと俺の背中に飛び付いてきた。 「俺が連れてくからテツは少し休んでろ。」 「いや、行く。」 「わーい、ぱぱもらんもいっしょ!」 「マナ、今浮き輪膨らませてやるから待っとけ。」 そう言うとカバンから折り畳まれた浮き輪を取り出し膨らませ始めた。 「うきわうきわー!」 「わざわざ膨らませなくてもいいだろ。膨らませると潰すのが面倒だし。」 「はぁ?プールと浮き輪は子どもにとっては1セットだろ。なぁ、マナ。」 「せっとせっと!」 「ほらみろ。」 「ったく2人して…」 「まぁそう僻むな。」 「ひがむな!」 「お前らなぁ…」 相変わらず二人の仲は良好だ。 確かに愛実が物心付いた頃にはもう側にはランが居て、それが普通の事になっている。 でも、今は良くてもある程度大きくなればこの異常さに気づく。 愛実はそれを理解した時、受け入れてくれるだろうか… もし愛実がランを拒絶するようなら… 俺は愛実を選ぶ。 その時の覚悟は今の内にしておいた方がいいかもしれないと日に日にデカくなる愛実を見て思う。 「ほらマナ、膨らんだぞ。」 「らん、まなうれしい!」 「おー、そうかそうか。そいつは良かった。」 「うん!らん、ありがと!だいすき!」 「俺もマナが好きだぞ。パパの次にだけどな。」 「えー、やー、まないちばんがいー。」 「ダメだ。マナは二番。」 「やだやだー!」 「おいよせよ、ラン。愛実がグズるから。」 グズり出した愛実を抱き上げて芋洗い状態の流れるプールに入った。 後ろからランがやって来て、スポッと愛実に浮き輪を被せた。 この芋洗いプールで愛実が他に巻き込まれて行かないように浮き輪に付いている紐を握った。 浮き輪に掴まってプカプカ浮いている姿は我が娘ながら可愛い。 「ッ…」 ふと何かが胸元を掠めた。 いや、掠めたというよりあからさまに這い回っている。 後ろを見るとランは上機嫌だ。 「あんま騒ぐとバレるぞ、テツ。」 また耳元が熱くなった。 「馬鹿、プールで乳繰り合うような歳じゃないだろ…」 「ロスタイムを取り戻すって言ったろ?」 「こんな事…したかったのかよ…ンッ…」 「娘の後ろで何感じてんだ、テツ…」 「お前が触…ッふ…」 「しかもこんなに人に囲まれてんのに…」 「止め…ッんン…」 爪の先が小刻みに乳首を引っ掻いた。 その度にビクビクと身体が震えた。 俺の状況を知る筈もない愛実はキャッキャとはしゃいで楽しそうだ。 まさか浮き輪の陰で父親が攻めされているなんて思ってもいないだろう。 「コリコリになってきたぞ、テツ…」 「ふ…ッン…」 声を堪えるのに必死だ。 すぐ隣には人も居る。 「愛実は俺がちゃんと見てるからテツ、お前は感じてろ…」 「ふざけ…ぁ…」 思わず漏れた声に口元を押さえた。 そして愛実と目が合った。 流石の愛実も今のは聞こえたらしい。 「ぱぱ?」 「…どうした、…愛実…」 「いたいいたい?」 「え?」 「ぱぱめぇーあかいよ?」 「大丈夫だ…プールの水が入っただけだから…」 「よしよし。」 愛実が俺の頭をポスポスと撫でた。 ここはホッコリするところだが、更に激しくなる指の動きに堪えるのが精一杯だ。 「マナ、危ないから前見とけ。」 「はーい!」 愛実はランの言う通りまた正面を向いて、またキャッキャ言い始めた。 「恥ずかしいな、テツ。乳首こんなビンビンにさせて…」 「ンッぅ…ふざけ…ッ…」 ランに乳首を摘み上げ、俺は後ろを振り向いてランを睨みつけた。 「可愛い…」 「馬鹿、いい加減にしろって!」 ピシャッとランの顔に水をかけると、思いっきりやりすぎて頭から水を被った。 「テツ…お前なぁ…」 「お前が悪い。」 前髪を掻き上げたランがなんかセクシーで、悔しいが少しときめいてしまった。 「見惚れてんなよ。」 「勘違いしすぎだ。誰が誰に見惚れたって?」 「もーもーもーもー、まなも!まなも!」 愛実が交ぜろと手を伸ばして、俺は愛実を抱き上げて浮き輪から出した。 「ラン、お前は浮き輪係だからな!」 「係って…」 ランがククッと笑い浮き輪を持った。 その後愛実を抱いて芋洗いプールを数周して、子ども用プールで愛実を遊ばせた。 「…」 「おい、テツ。まだ怒ってんのか?」 「…」 「テツ。」 「…」 「おーい。」 「…」 「テツさーん?」 「うるさい。」 「悪かったって。ちょっとのつもりがあまりに反応がよくて止められなくなった。」 「それくらい自制しろよ。」 「それは無理だ。」 「はぁ?…許さん…反省してないだろ…」 「テツ相手に自制なんてできるわけねぇだろ。」 「うるさい。とにかく許さん。」 楽しそうに遊びながら時々手を振ってくる愛実にピラピラと手を振り返した。 暫くすると愛実がプールから上がって走りながらこっちに来た。 「おいこら愛実、危ないから走るな。」 案の定愛実は滑って転んだ。 愛実が転ぶのを分かってたように愛実の側には行ったのはランだった。 「馬鹿!危ねぇだろ!」 「うわーん、いだいよー」 「頭でも打ったらどうするつもりだ!!」 「うあーん、らんごべんなざいー、ひっく…うわーん…」 愛実は疲れるまで泣き喚いた。 ランがこんなに愛実を怒った姿は初めて見た。 俺まで愛実を怒るわけにもいかず、泣いている愛実を抱き上げてあやしている間に愛実は眠ってしまった。 目の周りは真っ赤だ。 「悪かったな、ラン。嫌な役回りをさせて…」 「いや、泣かせて悪かった。」 「馬鹿だな…そんなの気にしてたのか?愛実は俺とお前で育ててるんだろ?」 「でも、俺とマナは他人だ…」 「ばーか。俺は、…嬉しかった。」 着替えをしながらこんな話をしているのがなんだかこそばゆい。 「…」 「家族みたいで、…嬉しかった。」 「家族…か…」 「あぁ。」 「幸せだ。…今が、凄く…」 そう言ったランの横顔は実際は強面だけど、なんだか無駄にキラキラ輝いて見えて、綺麗だと感じた。 愛実が起きないようにそっと着替えをさせて、その間にランは浮き輪を潰した。 車に戻り、扉を開けた瞬間に酷い熱気を感じた。 「あっつ…」 「今クーラー入れる。」 「あぁ、頼む。」 愛実をチャイルドシートに座らせて俺は久しぶりに助手席に座った。 「良かったな、愛実遊ばせてやれて。」 「あぁ。ありがとうな、ラン。無理してたんじゃないか?…」 「いや、俺はテツとマナが喜んでくれるならそれでいい。」 「お前のそういうとこ、好きだ…」 「今日はやけに素直にだな。」 「感謝しているんだ、本当に…」 「なら、今夜しっかり行動で示してもらおうか。」 「いや、寝ろよ。お前だって、疲れてるだろ?」 「だな。今日ヤったら早くイきそうだしな。」 「ったく…」 「挿入れた瞬間イったりでもしたら男が廃る…」 「いいから早く車出せ。」 「へーへー。」 シートベルトをして車が走り出した。 「…」 車の揺れが心地よくて何度か寝そうになったが堪えた。 ランも疲れてるのに、俺だけ寝るわけにはいかない。 「テツ。」 「ん?」 「寝ていいぞ。」 「いや、大丈夫だ。」 「なぁ、やっぱ今夜挿入れねぇから唇と乳首だけ貪らせろ。」 「はぁ~?」 ランの馬鹿な発言に思わずデカい声が出た。 「バカ、マナが起きるだろうが。」 「お前が変な事言うからだろ!」 「さっきのじゃ、足らねぇ…」 「…好きにしろ…」 「テツ…」 「なんだ…」 「お前ってやっぱ…」 「…」 「可愛い…」 スヤスヤ眠る愛実と、耳の奥が熱くなった俺を乗せてランの運転する車は心地よいスピードで走り続けた。 - end - ランテツよい。 マナちゃん絡ませると楽しいです。 血は繋がってなくても、ゆっくり家族の形を作っていければいいと思います。 みつき。

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