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窮鼠猫を噛む/8

「あッ……!」 上って、そっち!? かけらも予測していなかった激しい快感に、秀一は歯を食いしばった。 拒むようにきつく締め付けていたそこが徐々に柔らかく秀一の形に馴染んでくると、抱き締められているような安心感と意識の全てを持っていかれそうな激しい快感の相反する感覚が共存する。 ギュッと閉じた目を開くと、浴衣を中途半端に脱いだ奏真が顔を真っ赤にして自分に跨っている。涙目になって眉根を寄せているのに、少しも苦しそうではない。それは寧ろ恍惚と言える表情であった。 そしてその下半身は、わかってはいたけれど、自分の屹立したものを咥え込んでしっかりと繋がっている。 「ん…動いて、いい?」 荒い吐息を混ぜた問い掛けに、秀一はブリキのおもちゃのようにコクコクコクと何度も頷いた。 奏真がゆっくりと腰を上げる。熱く滾ったそこが外気に触れる。 奏真がゆっくりと腰を落とす。再び熱い内壁に包まれる。 奏真の動きひとつひとつに、頭が真っ白になるほどの快楽が押し寄せる。 「ン、あ、あっ…あ、ッ…」 酒が残っているのかそれともいつもと違う場所がそうさせるのか、普段は必死に声を殺す奏真が珍しくあられもない声を上げてよがっている。 それが余りに色っぽくて綺麗で可愛くて、秀一は自分に襲いくる快楽に負けじと目を血走らせてその姿を目に焼き付けた。 それを見ながら、秀一は猛烈な後悔の念に襲われていた。 もしかして、もしかして俺が目を瞑ってる間、奏真くん自分で解してたんじゃ。俺のを咥えながら自分で解してたんじゃ。それって物凄く、ものすごーーーく、エロくて可愛い姿だったに違いない。 なんで見逃したんだ、俺の大馬鹿野郎! あまりの悔しさに鼻の奥をつんと刺激する何かがこみ上げたその時、ふにゅっと唇に何かが触れる。 触れるだけのキスをした奏真は一旦離れると、ぺろりと舌先で秀一の唇を舐めてニヤリと挑発的な笑みを浮かべた。 「なに、考えてんの?」 ギラリと光ったその目はさながら獲物を狙う猛禽類のよう。きっといつもの秀一なら、萎縮して冷や汗を流しただろう。 しかし。 「奏真、くん…ッ!」 「あ、んんッ…ぁ、しゅうッ…!」 「奏真くん、ごめんッ!」 「え、あッ!?」 チャンスを無駄にした自分へのどうしようもない怒りに駆られた秀一は頭の中でカチッと何かのスイッチが入り、怯えるどころか奏真の細腰をがっしりと両手で掴んだ。 突然動きを封じられて驚きを露わにする奏真を余所にその腰をグッと持ち上げて、落とすと同時に思い切り突き上げた。 「ひッ!?あ、ちょっ…あ、待ッ…あ、あぁッ!」 奏真の制止の声も聞かず、ガツガツと下から攻める。自分で身体を支えていられなくなった奏真が倒れこんできても構わず攻め立て、一度果てると間を置かずに今度は正常位。 余すことなく温泉旅館での浴衣エッチを堪能した。 「…ばかやろー。」 そしてヘロヘロになった奏真が布団に伏せって力無い罵倒をするのを、にへらと緩みきった笑顔で返すのだった。

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