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第1話
「ったく。リタは勝手すぎるんだよ」
「そうですか?だって急がないと、龍二が逃げてしまいますよ」
「リタの強引さを目の当たりにしてるから、逃げねーよ。………あ、ここではリタナ皇子とか呼んだ方がいい?」
「ううん。いつも通り、リタって呼んで。ボクは、龍二にリタって呼ばれるのが1番好き」
後ろから自分を抱き締めてくれるリタナの腕にそっと手を添える。本当は、自分と一緒にいてはいけない相手なのに。リタナは、何よりも自分を選んでくれた。
砂漠の国、シリューナ皇国の第二皇子のリタナ。それが龍二の恋人の正体。
王にはならないけれど、両親に紹介だけはしておきたいと誘われて一緒にシリューナ皇国に来た。
龍二がシリューナ皇国に来た理由。それは、リタナと別れるため。きっとこの関係は認められないと思っていたからだ。男同士、しかも自分はただの一般庶民の日本人。シリューナ皇国の民や王族が、皇子であるリタナと付き合っていることを認めないはず。
だが、龍二の存在を国をあげて認めてくれた。シリューナ皇国の王は、泣きながら良かったと言ってくれた。怖そうに見えて、実は泣き虫らしい王。後で王妃が龍二にこそっと教えてくれた。
リタナの両親にも、民達にも認められた。これで心置きなく日本に帰れると龍二は思っていたが。リタナがそれを許すわけがなく。あれよあれよという間に、シリューナ皇国で生活することになった。
龍二は最初、荷物とかをどうするんだと思ったが、強引なリタナが何も準備してないわけがなく。リタナと一緒に住むことになった宮殿の一室に、龍二が住んでいたボロアパートの荷物が全部運び込まれていた。
「………ほんと、リタは強引だぜ」
「そこが好きでしょ」
「そうだけどって、あれも持ってきたんだ。正直俺、もう育てたくねーんだけど」
「えー、そうなの?ボクは、君と出会わせてくれた花だから好きなんだけどなぁ」
置かれいた荷物の中に紛れていた、月下美人。
龍二にとっては苦い思い出だったもの。一生、そうなるはずだったのに。
リタナのお陰で、苦い思いでは消え去ってくれた。
「ね、龍二。今夜は月下美人、咲いてくれるかな」
「さあな。それよりも、ベッドがあるんだし。久々にエッチしよう。俺もう我慢できない」
「ワオ!龍二から誘ってくれるなんて、今夜は止まれそうにないよ」
リタナの言葉に笑いながら、龍二から誘うようにキスをした。
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