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二人の作業(+もうひとり)
荷物に場所を取られてキュウキュウだったけど、なにげに丹生田と密着したんでコレはコレでアリな感じになりつつ、帰りついたのは十八時近く。
怒られるかな、とか思ってたけど、まったくそんなことはなく。
「お帰り」
笑顔で迎えてくれた岡部さんが「渡り廊下に行ってみなよ」なんて言ったから早速見に行って
「なにコレすっげ~~~っ!!」
びっくりして大声上げつつ渡り廊下に走り入った。
手すりの上に窓サッシ並べて隙間を木材で覆ってあって、中の壁とかは木の板のままだけど、床もクッションフロア貼ってて、吹きっさらしだった廊下がすっかりちゃんとした通路になってる!
「内側に断熱材入れたんだ。冬もOKだぞ」
「あ~!! だよね北海道って冬寒いんだもんね!」
うーわ! そこまでってマジかよっ!
「先輩たちだけでやったんだよね? 天才じゃね?」
「おまえも手伝っただろ」
苦笑交じりに大田原先輩が言ったけど「俺なんて雑用だし!」ぶんぶん手を振った。
「おい完成はしてないんだぞ」
「内装がまだだからな」
「壁紙はあるから、明日仕上げだ」
「さすがに外装と電気は業者に頼んでもらうしな」
つか言ってることがすでにプロっぽい!
「みんなマジ天才!! マジすげえし!!」
騒いでたらガシッと肩を組まれた。
「良いなあおまえ。テンション上がるわ~」
「大熊先輩っ!」
イケメンが間近でニヤニヤしてる。
「イイ仕事したと思ってもさぁ、そうやって無邪気にはしゃいでんの見ると、やりがいあるつうか」
「だな。藤枝、気に入ったか?」
大田原先輩もニッコリしてる。
「うん! つうか俺が気に入ってもしょうがないかもだけどさっ! お母さんとかはなんて言ってんの?」
「大満足だとさ」
「やったね! 最高じゃん!!」
俺の大絶賛に、先輩たちもみんな満足げだ。思わずみんなとハイタッチして回る。
すんげえよみんな!! つうか俺たちすげえっ!!
したら大熊先輩がにんまり笑って言った。
「明日は廊下だけじゃ無く、柱塗ったり細かい仕上げして、それで作業は終わると思うから明後日は遊べるぞ。とりあえず朝から海水浴場。テントやパラソルも貸してくれるってよ」
「マジで! やったぁ~!!」
新山先輩がいつもの神経質そうな顔で近寄ってきて「おまえらは最後の仕事があるぞ」と言った。
「網戸をつけろ。遊んで来たんだろ? その分働け」
「はぁい」
「もちろんです」
姉崎と丹生田が返事したので、俺も「ぅはいっ!」と答えた。
けど、俺らだけで網戸設置。……なんて……できんの?
「てか姉崎はともかく、そんなん俺なんかに出来ねえんじゃ」
「網戸なんて簡単だよ」
言いつつ大田原さんが道具を渡してくれた。「そうそう」ヘラッと笑った姉崎は
「買ってきたもの持って来てよ藤枝」
とかってまたパシリ扱いなんだけど、それで怒るよりめちゃ不器用な自覚ある俺は不安が拭えない。
「ああ、うん」
心許ない返事してたら、丹生田がガシッと肩を掴んだ。
「……俺も行こう」
二人で車まで行って荷物下ろしながら「網戸を張るのは難しくない。俺でも出来る」とか言ってくれた。
「藤枝は手伝ってくれれば良い」
優しい目で見てきたから、超ホッとした。
そんで網戸はマジで超簡単で、サッシがもうできてたからチョロい感じで完成した。つうか離れ自体に網戸無くて縁側んとこ開けっ放しなのに、通路だけ網戸って意味あんのかな?
でもイイもんね! 俺と丹生田(と姉崎)だけでつけた網戸! なんか感動!!
「なんかすごくね? こんなん俺らだけでできたんだぜ?」
「Congratulation!」
いきなり姉崎にハグされて、ほっぺたにキスまでしやがるから「うわあやめろっ」とか騒ぐ。丹生田が引きはがしてくれたけど「藤枝って平和だよねえ」とか犯人はニッコリ笑ってる。
なんかイヤミっぽいけど平気。だって気分良いし!
「それが藤枝の良いところだ」
丹生田も言ってくれたし、部屋でくつろいでた先輩たちに報告して見てもらってOK出してもらったし! 超ハッピーな感じで晩飯!
「登別港で水揚げした新鮮なやつだよ」
とお母さんが出してくれた飯は、昨日より刺身が多くてホッキとかツブとかホタテとかめっちゃうまい! もりもり腹一杯食って、食堂で騒ぐと怒られるから、部屋に戻って酒盛りしようぜ!
つってみんなで買い出しに出かけた。
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