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2. いつもの毎日

___カランカラン 「いらっしゃいませ、ってお前か。 この時間にくるなんて珍しいんじゃね?てか、また一夜限りの人探しに来たのかよ。 いい加減営業妨害で訴えるからな。」 そう言いながら、俺のいつものドリンクで使用するウォッカ・ライムジュース・ジンジャエール・ライムスライスを手際よく置いていく仕草はカウンターにいる誰もを魅了する。 「そう言いながらも、いつもの俺の作ってくれるのは蒼(そう)ちゃんじゃん。俺だって、ここを卒業したいんだから…蒼ちゃんも手伝って。俺の恋のお相手。」 目の前のコースターに置かれたモスコ・ミュールの中のライムがクルクルと回っている。 ちなみに目の前で白シャツの上に黒のベスト、黒のエプロンを付けているのはこの店のバーテンダーであり、俺の唯一の恋の相談相手。 須川蒼介 (すがわ そうすけ) いつもは優しく慰めてくれる蒼ちゃんも、今回ばかりは俺が悪いって言う。 俺は悪くない…。悪くない。 仕事漬けに、休日も仕事持ち帰ってきて机の上に書類広げて仕事だよ? せっかくお互いに休みが重なったのに、俺の話も聞かないなんてあまりにも酷い。 俺は悪くない。向こうから吹っ掛けてきたんだ。 「その対策方法が分かれば苦労しない。お前はいつも他人任せだからな。そういう所じゃないか?何かあれば『何でもいい。』『好きにすれば』なんて、相手が離れていくのも時間の問題だろうよ。寧ろ前の恋人を尊敬するよ、俺は。お前のワガママに2年半も付き合ってたんだからな。」 また、お客さんが入ってきたのか蒼ちゃんはカットしていたオレンジを皿の上に置いて、入り口の方へと歩いていった。 「コートお預かり致します。本日もご来店ありがとうございます。御堂院様。こちらのお席へどうぞ。」

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