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3. 初めて会った男
蒼ちゃんが引いた椅子にゆっくりと腰掛けたのはここら辺では見ない、誰が見てもイケメンと言われる部類の顔の整った男だった。
キリッとした眉に、つり上がっているわけでもなく、かと言ってタレ目でもない、少し離れている俺でさえも分かる目の強さ。
そして、整った鼻筋にシュッとした輪郭。グラスに口をつける唇は、薄く開いていて大人の色気というものをこの俺でさえ感じる。
そして極めつけには、整えられた髪型にダークスーツを身に纏っていて、危ない雰囲気さえさせている。
俺があんなカンペキな男だったら苦労しなかったんだろうな…
「お隣、いいかな。」
「ふぇ、?」
カタ、と音がして、隣の椅子が後ろに引かれたかと思うとさっきまで見ていたダークスーツの男が立っていた。
「いいかい?」
「え、あ、はい。どうぞ。」
特に断る理由もなかったし、少し話してみたいとも思っていた俺にとってはとても好都合だった。
「実は、入った時から美人がいるなぁと思っていたんだよね。周りの奴らも目を引く美人さん。でも誰も誘おうとしないから行っちゃえ的なね。」
なんて都合のいい言い訳。なんて言ってるけど、実際に周りが近寄って来ないのには理由がある。けれど、初めて会ったこの人にはそんなの知る訳もないし、蒼ちゃんがそんな事言ってる訳もない。
かと言って、俺も初対面の人に教えられるような事でもない。
とりあえず、今日はこの人でいいかな。
「イケメンなお兄さん、お名前は?」
「ふはっ、お兄さんね。悪くないな。御堂院 秀一(みどういん しゅういち)だ。お前の名前は」
初めての人に対して、俺が使う名前は
「『イチ』だよ。」
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