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―純血の絆―③ヴァンパイアとしての愛し方3

「なんていうか……。穂高さんが傍にいてくれるだけで、つらいのがなくなる気がします」  視線を逸らしながら、思っていたことを口にする。下半身の事情で焦っているせいか、さっきまでつらかった吸血衝動が、多少なりとも緩和されていた。 「千秋は我慢強いね。俺も見習わなくてはいけないな」  カーテンの隙間から入り込む僅かな月明かりが、穂高さんを照らした。俺の顔をじっと見つめながら、印象的な瞳を意味深に細める表情を目の当たりにして、胸がきゅっとしなる。  それと同時に、栗色の髪も月明かりの加減で金髪に見えるせいで、ヴァンパイアの姿をした彼に激しく抱かれたことを思い出してしまった。 「穂高さん……」  妙に掠れた自分の声が、部屋の中に響く。どことなく誘っているようなそれを聞いた途端に、目の前にある形のいい口角の端が上がった。  意味ありげな穂高さんの微笑に、何度も目を瞬かせるしかない。こんなふうに微笑まれる意味が、さっぱり思いつかないからだった。 「なぁ千秋、布団の上から抱きしめた時点で君が勃っていることに、ちゃっかり気がついていたんだが――」 「えっ!?」 「素知らぬふりして、そのままやり過ごせるほど、できた男じゃないんでね」  穂高さんの言葉に驚いて、布団を握りしめていた力が呆気なく抜けてしまった。見ていてそれが分かったのか、次の瞬間には勢いよく布団が剥ぎ取られてしまう。  外気にさらされた躰は、ぬくもりが瞬く間に消え去り、厚手のパジャマを着ていても背筋がぞくっとした。ヴァンパイアの状態でいるときは体温が低いので、寒さが余計に堪える。 「君の体温をできるだけ奪わないように、あたためてあげる。こうして――」  手にした布団を自分に背中に被せるなり、俺に跨ってきた穂高さん。そのままゆっくりと包み込むように、躰の上に倒れてきた。 「あったかい……」  冷えた躰に、穂高さんの体温がとても心地よかった。俺の頬にオデコをすりりと擦りつけてから、首筋にキスを落とす。 「千秋がヴァンパイアだというのに、君の香りを嗅ぐだけで、いつものように吸血したくなる」 「えっ?」  いつも俺を吸血するときに噛む場所に、穂高さんの牙の側面が当たって、彼が変身したことが分かった。

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