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ドキドキハラハラのハロウィンナイト

 去年のハロウィンは一緒にいられなかったからこそ、今年は何かして喜ばせてみたい。そう思えるのはやっぱり、一緒にいて楽しいからなんだろうなぁ。  いつも穂高さんに驚かされてばかりいるから、俺だって頑張ってみようという勢いで、ハロウィンならではの衣装を、ネットで取り寄せてみる。  穂高さんに内緒にすべく、荷物は職場に届けてもらうように指定したので、絶対にバレないであろう。  職場でのお昼休み、小さなダンボールを手に、誰も使っていない空き部屋に足を踏み入れた。ちょっとだけ埃っぽいけど、荷物を確認するだけで長居をしないから大丈夫かな。  しゃがみ込んで、ダンボールを封印しているテープをばりばり剥がし、わくわくしながら中身を拝見。 (あれ? 何だろう、この黒い塊は……)  それを手にして、恐るおそる持ち上げる。長さが30センチくらいで艶のある漆黒の、どこからどうみたって女性用のカツラだ。まっすぐなそれをしげしげと眺めてから、前後左右を一応確認し、思いきって被ってみた。  ちょうど肩を少しだけ超えたくらいの髪の長さになったので、興味本位に意味なく首を動かしてみる。さらさらと頬や首元を撫でる髪の毛に、女の人は邪魔じゃないのかなぁと、いらない心配をしてしまった。  しかし、どうしてこんな物が入っているんだろう? 注文したのは、ドラキュラ伯爵の衣装だったのに――  被っていたカツラを外し、気を取り直して再び箱の中身を確認してみる。箱の隅にあった納品書を手にしながら、何が入っているのかをチェックしたのだけれど。 「注文したものが一切入っていないって、どうなっているんだろう?」  納品書と領収書の宛名は、しっかりと俺宛になっているのにな。もしかして業者が、入れ間違いのミスをしてしまったとか!?  返品して同じものを再発注しても、人気のある商品だったドラキュラ伯爵の衣装が、きちんと手に入るかどうかが分からない。時期的に難しいかも……あと3日でなんて、きっと無理だ。  基本、島に届けられる荷物って、五日間はかかってしまうから。  ハロウィンの仮装が女装になるなんて、笑うに笑えないよ。どうしよう。  しかしながら俺には、これ以外の選択の余地はなく、しかも意外と穂高さんが喜ぶんじゃないかという、淡い期待もあったので、渋々自宅に衣装を持ち帰ったのだった。

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