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「三島、おはよ」 「おはよう、森保君」 スマホごしに森保君と挨拶。 只今、午後10時45分。 森保君、この時間は、こんばんはの方が良いのではなかろうか。 立冬をむかえ、夜もだいぶ寒くなってきた。 あれから、森保君とは仲良くさせてもらってる。 というか、常に一緒にいる。 生物で研究グループを作るとき、体育で2人一組のストレッチするとき等々。 なにかと、 「三島」 俺を呼ぶ。 急に距離感を詰めてきたイケメンに、毎日ドギマギドギマギ。 確かに友人Aを目指してましたよ。 ですが、いきなり友人Aを飛び越えて親友Aのポジションって。 俺にはちと早すぎやしやせんか? そんなこんなで、連絡先もサラッと交換したもんだから、 「三島、何してた」 電話もちょくちょくかかってくるようになりまして。 初めてこそ、画面に表示される『もりやすくん』に緊張したけど、慣れた今では、森保君には申し訳ないが、電話ごしの方が話しやすい。 だって、毎日がイケメンとの接近戦ダゼ。"いのちだいじに"でいかないと。 その点、電話は声だけ。顔が見えない分、緊張度は半減。 それに、イケイケグループもいないから、周りを気にせずおしゃべりできる。 「俺はね、今お風呂からあがったとこ。森保君は?」 「……」 「もしもし?」 「ああ、悪りー、今一瞬寝たわ」 だが、それがいけなかった。 「ん?なっちゃん、眠いの?」 つい、親友A(仮)はいつも妹に言う台詞を言ってしまったのだった。

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