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その5
窓の外には小鳥と小人のおじさんがいた。
開けた窓から2人一緒に入ってきて、おじさんがぺこりとお辞儀をした。
「こんにちは……おや? 拐われた子は1人だったんだが……、2人?」
「こっちは私の息子です。今日、なぜだか突然小さくなって」
「ほうほうほう、そうかそうか。いやいやいや、良きかな良きかな」
「あの……?」
ぼくたちは小さくなった理由をバラされると思ってドキドキしていたけど、おじさんが話し始める前にクリスが大きくなった。
「わっ!」
なにがどうしてこうなるのか、全然理解できないけどクリスが元に戻った。
「キミはまだ、大人になったばかりかな?」
「そ……」
なんで分かっちゃうの???
それからおじさんはお母さんが出したブルーベリーを抱えて食べながら小人について教えてくれた。
1.小人は森に200人くらい暮らしている。
2.小人は動物と心が通じる。虫とは通じない。
3.大人になって小人の中に好きな人ができなければ外に出て結婚相手を探す。
4.好きな人の子供を作るために相手の大きさに合わせて大きくなることができる。
5.相手を小さくすることもできる。
6.大きくなるためには相手の子種を体内に取り入れる必要がある。
7.相手を小さくするためには自分の子種を相手の体内に入れる。
8.妊娠したら生まれるまで2〜3日に1回は子種を補給する必要がある。
9.生まれた子が小人になるかどうかは生まれてみないと分からない。
10.体が未熟だと子種が薄いので大きさが変わる時間が短い。
「つまり、クリスが小さくなったのはミノルの子種の能力、と言うことなの?」
「能力と言うより特性じゃな。相手の子種を取り込んだ方が相手に大きさを合わせるんだ」
「……クリス?」
「はい!」
「……ミノル?」
「は、はいっ!」
「2人共、本気なの? そう言う事は結婚したい人とするべき事だって教えたわよね?」
「えっと…」
「あの…」
「まぁまぁ奥さん、まだちょっと舐めてみた程度じゃろうから興味本位でも構わんじゃろ」
「そんな! いい加減な気持ちで触れ合ってどちらかが傷つく事になったらどうするんですか!?」
「いい加減じゃない! おれ、兄ちゃんと結婚するって言ったじゃないか!」
「それはずっと一緒にいるって意味でしょう?」
「おかーさん、ぼく、クリスの事、大好きだよ。赤ちゃんのことはまだ良く分からないけど、ちゃんと結婚できるならしたい」
「お母さん、おれ、兄ちゃんと初めて同じ大きさで抱きしめ合えたんだよ。そうしたら泣くほど嬉しくて幸せだったんだ。……離れたくない」
「母さん、良いじゃないか。傷つく事があったとしても私達が支えれば良いんだ」
「だってこんなに早く結婚なんて言い出すなんて……2人ともよく分かってないのに!!」
うん、まぁ。
正直なところ何となくずっと一緒にいられるのかな?ってくらいに考えている。
でも気持ち良い事できるのか、とかも考えちゃうの。
「良いか?結婚したからってこの家から出ていく必要はないけど将来のために仕事はしっかりするんだぞ?そしてそのために勉強して、自分にできる仕事を見つけて、それからミノルの本当のご両親にも会いに行かなくちゃ」
「本当の両親……」
「そうよ! 私達が行ったらお邪魔かしら?お招きするほうが良い?」
「ふむ。そう言って下さるのなら……ミノルの親兄弟を連れてこよう。よろしいかな?」
「もちろんです! ぜひお会いしたいわ」
「ミノルはすでに私達の大切な家族です。けれど本当のご両親だって心配なさっていたでしょう。お会いしてこれからも私達と暮らしていくことをお許し頂きたい」
「あぁ。小人は子沢山じゃから元気に暮らしていればそれで良いんじゃ。返せなどとは言わんじゃろ」
そうして3日後にやってきたぼくの兄弟は11人もいた。
14人家族……
ちっちゃくてかわいい赤ちゃんまでいて、お父さんとお母さんがメロメロになった。
初めて会った両親はわりとてきとーな感じで、ぼくの兄弟がこの街に興味を持ったらよろしく〜!って言った。お父さんは珍しがられて攫われないかと心配してたけど、なんと大きくなる薬があるんだって!!
結婚相手が見つかれば相手の子種で良いんだけど、探す時にはそうは行かないからね。
それからぼくの家にはちょいちょい兄たちがやってくる。中にはクリスの子種を味見させろなんて言うアホな兄もいてケンカもするけど、楽しく暮らしています。
学校を卒業してぼくとクリスは野生動物研究所で働くことになった。
ぼくは動物と心が通じるのでとても重宝されている!
クリスも優しくて面倒見がいいから先輩たちからも動物たちからも気に入られている。自慢の弟だ。
そして仕事を始めてすぐ結婚したから人間サイズで暮らしている。
卒業前から薬で大きくなってたから、職場ではぼくが小人だってことは秘密。
2〜3日に1回で良いのに毎日子種をもらってて、早めに赤ちゃんできちゃいそうだけど、そうなったらそうなったで良いかな?って。だってお母さんが赤ちゃん抱っこしたいって駄々こねてるんだもん。まだ若いんだからお母さんが生んでも良いのにね。
お父さんは子供を拾ったと思ったけど嫁を拾ったんだなーって笑ってる。
……ぼくが大きくなるって事はぼくがお嫁さんだと公言しているようなもので……ちょっと恥ずかしい。けどまぁしかたない。幸せだから仕方ない。
「クリス、明日仕事休みだから……ね?」
「うん。我慢しなくて良い日だね?」
ぼくの負担を考えて平日は1回で我慢してるけど、休みの前は思いっきりイチャイチャする。一緒にお風呂に入って体の隅々まで洗いっこして、ベッドの上で始まるやさしいキスからの睦み合い。
「ミノル、愛してる」
「クリス……ぼくだって、初めからずっと愛してる」
家族愛から恋愛、夫婦愛へと育ったぼくたちの気持ちはきっと死ぬまで変わらない。むしろ成長し続けるかも知れない。
お父さん、拾ってくれてありがとう。
お母さん、育ててくれてありがとう。
クリス、生まれてきてくれてありがとう。
ぼくは生まれてからずっと幸せです。
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