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優しい手のぬくもり。(2)

「そんな……」  もう二度と、同じ過ちを繰り返さないようにとあれほど言い聞かせていたのに。なんということをしてしまったのだろう。  慌てて袖をめくり、奏美さんを襲った時に出来たような(あざ)がないかを確かめるものの、痣らしきものは見当たらない。 (だったら違う方法で手にかけたっていうこと?)  いったいどういう方法で? 「……っつ!!」  居ても立ってもいられなくなった僕は、ベッドから抜け出し、ドアを開けた。  目の前には階段が広がっている。その階段の下から、水の流れる音が聞こえてくる。急いで階段を駆け下りる。あと四段というところで僕の右足は左足の邪魔をした。  身体が傾く。 (落ちる!!)  僕はやがてやってくる激痛に耐えるため、ぎゅっと目を閉じた。  ……んだけど…………。 (あれ? 痛くない?)  たった数段だけど体勢は崩れた。階段を踏み外したんだから、僕の身体はお団子みたいになって一気に転げ落ち、硬い地面にぶち当たると思ったのに、少しも痛みを感じない。  それにそれに、階段から勢いよく落下したんだし大きな物音さえもしないなんて……。  と、いうか……。 (あれ?)  身体があたたかい。誰かの腕に包まれてるみたい。  不思議に思って恐る恐る閉じた目を開けると――。  目の前には赤みがかった茶色の髪をした、とても綺麗な人がいた。 「大丈夫? 怪我はない?」 「あな、たは……」  鼻にかかった、甘い声。この声の人は誰だか知っている。トラックに轢かれそうになった僕を助けてくれた男の人だ。

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