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いつもとは違う日常。(4)

 紅さんがそう言った理由は夕方から深夜にかけて仕事に出かけるからだ。  昼間は一緒に過ごせる。そう思うととても嬉しい。  その反面、夜がひとりだとやっぱり不安なんだ。  今だって紅さんの隣で眠っていないととても悲しくて苦しいから。  早くひとりで眠れるようにならなきゃって思うんだけど、なかなか恐怖心は消えてくれない。 「紅さんのお知り合いさん……ですか?」  霊媒師さん仲間みたいなものかな? 「そう、わたしの知り合い。きっと比良も気に入ると思うよ」  いったいどんな人なんだろう。  色いろ考えを巡らせていると、紅さんの手が僕の方へと伸びてきた。  僕の右頬から伝わる、あたたかな体温。  それだけで、僕の胸がきゅって締めつけられるんだ。 「比良、夜はあまり共にできないが、その分、お風呂は入ろうね」  紅さんの世話好きは、いったいどこまで続くんだろう。  もう、ほとんど体力は回復しているっていうのに、こうやって僕の面倒を見ようとしてくれる。 『一緒にお風呂』はとても恥ずかしいけれど……紅さんがそれを望むならそれでいい。  それに、僕だって紅さんと少しでも多く一緒にいたいって思うから……。  こうして僕を気にかけてくれるっていうことは、まだ紅さんの傍にいられるっていう意味だよね。 「……はい」  たぶん、返事をした僕の顔はとても真っ赤になっているだろう。だって、こんなに顔が熱い。 「比良、ありがとう」  ありがとうなんて、こっちのセリフだ。紅さんはとても優しいから……。だからつい、涙が(あふ)れてしまう。 「比良……君は泣き虫さんだね」 「……っ…………」

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