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第33話.自覚する気持ち

第1回小テストが終わっても3人の勉強は続いていた。 次回の小テストは高校に入ってから習った公式を使ったり、理論を使わなくてはならないのだ。 誠は中学生の問題集を終わらせると、高校生の問題集へと入っていった。 ここには高い壁がある。 そう感じられることも勉強してきたからだった。 「難しい」 公式も理論も覚えなくては使えない。でも、その覚える事は多いし、どれを使えばいいのか分からなくなるしで、誠は頭がパンクしそうだった。 「ちょっと……休もう……」 静はそう言うと2人の前にジュースを置く。 「ありがとう、静」 2人の声がユニゾンのように重なる。 敦は一口だけ飲むと、口を開いた。 「あのさ、勉強とは関係ないんだけど、2人に聞いてもらいたい事があって」 静と誠はコクコクと飲んでいたジュースを机に置くと、少し頬を赤く染めている敦に注目する。 「何?」 「えっと、、す、好きな人が出来た」 「えっ?! 敦に? 誰?」 誠は誰の事だろうと考えるが分からない。 敦は顔を真っ赤にして俯いてしまう。 「長谷くん……でしょ…?」 静の言葉に敦はガバッと顔を上げて目を丸くする。 「分かりやすかった? 潤一にもバレてるかな」 「それは……ないと…思う…」 誠は長谷くん? とその人物を思い出す。 「長谷くんって敦のルームメイトで、大っきくて怖そうな人の事?」 「そう。でも、怖くないから」 あれから潤一も夕飯の後はすぐに部屋に戻って来るようになり、敦と潤一は毎日2人で話す時間を作るようになっていた。 話せば話すほど、敦は潤一のことをもっと知りたいと思うようになっていた。 時折見せる笑顔は何度でも心を鷲掴みにする。 この感情を“好き”と言わないのなら、一体何なのだろうと思う。 「静も誠も苦手かな?」 「話してみないと分からないかな」 『大きいから苦手だけど、不思議と長谷くんには恐怖は感じない。2人は気が付いてないと思うけど、結構周りからガードしてくれてるよ』 敦も誠もガードという文字に引っかかる。 「ガードって護ってくれてるってこと? 何から?」 『誠も敦もそうとうモテてるから、襲おうとしてる人がいた。僕はそういう気配には敏感だから。そういうの未然に防いでくれてた』 敦は襲われそうになっていたのは自分ではなく、誠と静だと思っていた。 という事は、もしかしたら潤一は誠か静のどちらかを好きなのかもしれない。 そう思うだけでも敦の胸はキュウッと苦しくなる。 その後は勉強にならなくて敦は部屋に戻った。

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