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第35話.偶然の再会
静と誠と敦の3人はいつも一緒にお昼ご飯を食べていた。
最近敦と付き合い始めた潤一も敦の隣に座っている。
敦が潤一に告白された事を2人に報告しに行った時、報告する前に静に
「両…想い…おめで…とう」
と言われてまたまた驚いてしまった。
なんと、静は敦の気持ちにも潤一の気持ちにも気が付いていたと言う。
自分の事はからっきしでも他人の恋愛事情に聡い静は誰が誰を好きなのか、いつも言い当てていた。
学生食堂で4人でお昼ご飯を食べていると、入り口が少し騒がしくなる。
何かあったのかな? と誠が入り口の方を見ると、自分が恋い焦がれている人を見つけた。
「生徒会長だ」
自分達が入学してから食堂に生徒会長が現れたのは初めてだった。
静は無くなった水の補給に給水器に並んでいた。
そこに並んでいた人達も、生徒会長に吸い寄せられる様にいなくなって、静はなみなみとコップに水を注ぐと席に帰ろうとした。
「静?」
急に名前を呼ばれてそちらを見ると、そこには昔の面影を残した雪人がいた。
「雪…人…」
思わず名前を呼び返すと、雪人の隣にいた人が急に目の前に迫って来て、久々に恐怖を感じると体が勝手に動いて、その人を投げ飛ばしてしまった。
一気にその場に静けさが広がる。
マズいということは分かっている。でも投げ飛ばされてもなお静を睨み付ける人に、静は更なる恐怖を感じて呼吸もままならなくなる。
声も出なければ、体も動かない。それどころかガタガタと震え出してしまう。
雪人も投げ飛ばされた人も静の異変に気がつく。
雪人が静に触ろうとした瞬間、その手が静に届く前に拓海が静を抱き締めていた。
「佐山くんだったね。静くんとは昔の知り合いと聞いてるけど、触らせるわけにはいかないな」
聞こえてくる拓海の声に静は少しずつ正気を取り戻してくる。
「大丈夫だからね」
優しい声が静の心に染み渡る。
「静、大丈夫?」
誠と敦の声も聞こえてきて、静の震えは止まっていた。
「拓海…さん…ありが…とう……」
拓海の腕から出ると、静は投げ飛ばした相手に頭を下げた。
「ごめん…なさい…」
謝られてしまうと、それ以上何も言えなくなってしまう。
「いや、こっちも悪かったよ」
静が首を横に振るのを見ると、その人は雪人に話しかけた。
「会長、そろそろ行きませんと、会議に遅れます」
まるで秘書の様に手帳を見て、腕時計で時間を確認する。
「あぁ、分かってる。静、また日を改めて」
雪人がその場を離れるその前に、1人の少年と目が合った。
その子には見覚えがあった。
でも、それがいつの事なのか思い出せず、記憶を辿る。
何故だかその子から目が離せなくなってしまった。
「会長?」
「すまない。行こうか」
雪人は誠の横を通り過ぎる時にもう一度よく顔を見た。
そうだ! 大きな荷物を持った少年だ。
会議室に着いた時に思い出しても遅かった。
クリッとした大きな眼が印象的だった少年。
静を心配していたということは、静に会いに行けばもう一度会えるかもしれない。
雪人は名前も知らない少年にもう一度会いたいと思っていた。
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