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第36話.生徒会長の1日

生徒会長、佐山雪人の1日は朝5時に始まる。 いつも目覚まし時計が鳴る前に眼が覚めると、どうしても出来てしまう寝癖を直す為にシャワーを浴びる。 生徒会長は皆の手本とならなければならないから、寝癖があるままで登校する訳にはいかないのだ。 夜にも大浴場で隅々まで綺麗にするが、朝のシャワーの時もしっかりと体を綺麗に洗う。 髪をセットして、生徒会長の部屋と担当教諭の部屋にだけあるミニキッチンで簡単に食べられるサンドイッチを作るとそれを食べる。 食べ終わったら歯磨きをして、一分の隙も無いように制服を着る。 ここまでで約1時間。 全身鏡で自分の制服姿に変なところがないか確認をしたら登校する。 ここ、聖凛高等学校は誰よりも先に生徒会長が登校する事が決まりとなっている。 24時間常駐している守衛さんに挨拶をして校内に入ると、生徒会室へ向かう。 本来なら昨日までに済ませておかなくてはならない書類の束が山積みとなっている。 最終的に生徒会室へ戻ることができない日も多く、もっぱら朝の仕事はこの書類の整理となる。 その書類の整理が終わる頃に、生徒会長の仕事の管理をして、スケジュールを組んでいる副生徒会長が登校し、生徒会室へとやってくる。 「会長、おはようございます」 「あぁ、おはよう。島、今日のスケジュールはどうなってる?」 副生徒会長の名前は島秀徳(しま ひでのり)。元々は島も生徒会長候補の1人だったが、惜しくも雪人に負けてしまった。 去年は雪人と一緒に会計係をしていたので、雪人は島がどれ程緻密に色々な所に限りある予算を振り分けていたかを見ていた。その管理能力の高さから、雪人が副生徒会長として任命したのだ。 今はその能力を遺憾なく発揮して生徒会長のスケジュールを分刻みで組んでいる。 「今日は週の始まりなので、まず講堂での朝礼で挨拶を。その後職員室での職員会議に出席。もうすぐ中間試験の範囲などが発表となるので、その確認もお願いします。今日は校外の活動はないので、普通に授業を受けて頂きます。昼休みには今年の部活動費に関する会議があります。私も書類には目を通しましたが、特に問題になる事は無いかと思います。ただ一点、ラグビー部が今回プロからも一目を置かれている新入生が入部したことで、色々と言ってくる可能性があるかと思います。放課後のスケジュールについてはまだ変わることもありますので、昼休みに説明させて頂きます。以上です」 「ありがとう。では処理済みの書類の仕分けを頼む。昼休みに必要な部費に関する資料は俺も先に見ておきたいので用意してくれ」 そう言う雪人の目の前に島は書類をさっと取り出した。 「そう言われると思い、用意しておきました」 「流石だな」 本当に生徒会長の資質があるのは島だと雪人は思っていた。 感情に左右されることなく、自分の仕事を遂行する。自分にもその能力が欲しいと思ったのは1度ではない。 悩んだ時には島に相談することも多かった。 周りから本当の実権を握っているのは島だと言われていることも雪人は気が付いていた。 それでも自分が出来ることをする。それしかなかった。 それが最終的に自分を選んでくれた人達への恩返しになると思っていた。 1つ1つ確実に仕事をこなしていく。 1日の仕事が終わる頃には日付が変わっていることも少なくない。 生徒会長の仕事は椅子に座って命令するだけだ、なんて言う奴らにはいつでも変わってやると言いたくなる。 でもそんな奴らはいつも島がスケジュール帳を見せて黙らせているらしい。 確かに自分でも黙ってしまうと思う雪人だった。 今日は珍しく校外活動が無かったが、大抵近隣の学校との交流や、交換留学生のホームステイ先に聞き取りをしに行ったりと忙しく動き回っている。 そういった時は授業は免除される。 でも、生徒会長として成績を落とす訳にはいかない。 ようやく自分の時間が持てても、勉強に当てることが殆どで、趣味の時間を過ごすこともできなかった。 生徒会長を1度引き受けてしまうと、任期満了までどの様な理由があろうと辞めることは出来ない。 色々な制約があるが、もちろんやりがいもある。 雪人は生徒会長になった場合どんな生活になるのかは先代の会長から聞いていたので、自分の時間が取れる事は殆どないことも知っていた。 自分は1学期が終わる時に満了を迎えることになる。 おそらく今2年生の生徒会役員の中から新しい生徒会長が決まるだろう。 その人の為にも働きやすい環境を整えたいと思っているのだがなかなかそこまで手が回っていない。 毎日仕事をしている大人は凄いと思う。 いつか、ここで学んだことを活かせるようになればいいと思い、雪人は今日も生徒会長として頑張っていた。 ーーーーーーーーーーーーーーーーー 【お詫び】 ここまで雪人のことを書いて、この子は受けだと気が付きました………! なので誠の相手は他に考えることに致しました。 雪人の登場を待っていてくださった方には大変申し訳ありませんが、ご了承ください。

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