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第73話.風間先生
「風間先生、この近くにいたみたいで、すぐに来るって。僕は迎えに行って来るから」
保健室を出ると拓海はすぐに明に連絡を入れる。
どうせ後でバレるのなら先に言った方が得策だ。
「あ、明さん? 今大丈夫ですか? 静くんのことなんです。静くんには明さんには言わないで欲しいと言われたんですが……え!? それなら聞かないって? ……あぁ、はい、分かりました」
明さんに静が言いたくないのなら聞かないと言われて拓海は驚いた。
あまりに驚いてしまって立ち止まっていたので、拓海は小走りで通用門へ向かった。
拓海が通用門に着くと、風間先生以外にももう1人いた。
「諒平 さん!?」
「拓海ちゃん、お久〜」
「地迫先生はうちのと知り合いでしたか」
「え!?」
全く2人が結び付かないが、確かに2人共『風間』だった。
「だって拓海ちゃんは明きゅんの恋人よ? 私のお店にも何度か来てくれてるから」
「明くんの……? そうでしたか。妻がお世話になっているようで」
堅物だと思っていた風間先生が、まさか自由人を具現化したような諒平と夫夫 だったとは!
「あ、静くんなんですが今は保健室にいます。何度か吐血してまして。本人は想定内だなんて言ってるんですが」
風間先生にここに来てもらった理由を忘れそうになった拓海は、本題に入った。
「無理に全力で走ったのでしょ? それだけはやめておきなさいと言ったんですがね」
拓海は2人を連れて保健室に向かった。
保健室に入ると、風間先生はすぐに静のところに向かう。
静の傍には鈴成がいた。
「少し席を外していただけますか?」
ベッドの周りのカーテンをきっちり閉めると、風間先生は鈴成に話しかけた。
「分かりました」
鈴成がカーテンの外に出ると、風間先生は静の顔を見て溜め息をついた。
「ごめんなさい。約束守れませんでした」
「声、出るようになったんだね。それはおめでとうと言わせてもらうよ。でも、今回のことは頂けないね。身体に負担がかかるのもあるけど、周りの人達を不安にさせてる。泣きそうな子までいたよ」
敦から連絡を受けた誠も先程ここに着いたばかりだった。血を吐いたことを聞いて心配で泣きそうになったのだ。
「一応、検査だけはしないとね。今から病院に来てもらうから。何もなければ、すぐに戻れるよ」
「……はい………」
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