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第139話.◆戸惑い

リオさんとセックスをした。 温かくて気持ちよくて、がむしゃらに動いて全てが終わって、リオさんにも鈴成さんにも申し訳ない気持ちでいっぱいになる。 「あ、あの、中に出すとか、ごめんなさい!」 僕には謝ることくらいしか出来なかった。 「ふふっ、大丈夫よ。それより気持ち良かったぁ! またお願いしたいくらい」 「里緒!」 リオさんさんは明るく笑ってる。 でもそれは表面上のことのように見えた。 「分かってるわよ。単なる通過儀礼で、この1回きりだって事は」 「通過儀礼?」 「そう。ここに来たら女の子は男の子と、男の子は女の子とセックスするの。それはビデオカメラで撮られて、秀明様のコレクションになるの」 ということは、今回のこれも秀明さんが見るってことなんだ。 ビデオカメラで撮られてるってことすっかり頭から抜けてた。 急に黙ったリオさんを見ると、今にも泣きそうな顔をしていた。 頰に手を伸ばす。指先が触れるとリオさんはビクッとした。それでも手のひらで頰を撫でる。 「辛いなら泣いても良いんですよ?」 少し驚いた顔をしてから笑顔を見せる。 「大丈夫よ。ありがとう」 僕の手にリオさんの手が重なる。 「シズカ君の言ったこと信じてみようかな」 「ここから出るってことですか?」 「うん、でも私も残るわ」 「ダメです! 残るのは僕だけです。身内の責任ですから」 キュッと手を握ってくる。 「僕は皆さんが辛い思いをしている間に幸せを知りました。だから今度は皆さんが幸せにならないといけないんです」 幸せを知ってしまったから、これからのことが余計に怖くなってしまった。 でも、僕は大丈夫だと変な自信があった。 リオさんに握られた手とは反対の手で指輪を触る。 きっとこの指輪が僕を地獄の底から救ってくれる。 「静、通過儀礼は終わった。お前の場所はここじゃない」 鎖の端がリオさんの所から外されるのと同時にリオさんの手も離れる。 「あ、シズカ君、素敵だったよ。ありがとね」 「え? あの、ど、ど、どういたしまして………?」 そう言ったらみんなから笑われてしまった。 「くっくっくっ、どういたしましてはないだろ」 「え? じゃあ、どう言ったら?」 「そんなの頭撫でてやりゃ良いだろ?」 そんなことを言われながら僕の場所に連れて行かれた。 リオさんからは1番遠い奥で、周りは男の子ばかりだった。 「静、今日はこれで終わりだ。明日の朝は地下に行く」 「分かりました」 地下? サファイアを使うのかな? この場では使えないし。 吾妻が離れると周りの人に挨拶をした。 「静です。よろしくお願いします」 「俺は新一郎、新しい一郎な。シンでいい」 隣の背が高そうな男の人が自己紹介をしてきた。 この人も秀明さんの相手をしてるのかな? ちょっと想像出来ない。 「僕は冬。春夏秋冬の冬。そのままフユって呼んでね」 他の人達は全員全裸だが、この子だけは人形のような格好をしている。 もしかして、着飾るだけの子ってフユくんのこと? 「シンさんとフユくん。覚えました。そういえば皆さん首輪の色が違うんですねー」 「ぷっ」 「ハハっ」 急に笑われてしまった。何か変なこと言ったかな?? 「え? 変なこと言いましたか?」 「いや、ここに来ると全員それ、言うんだよ。俺も言ったしな。お前は? シズカは何色?」 「赤ですね」 「そっか、赤か」 笑っていた顔が真顔になる。 赤には何かあるのかな? 「シズカ、赤をつけた奴は抱き潰されることが多いんだ」 「そうだと覚悟してきてるから、気にしないで。心配してくれてありがとう」 そう言いながら怖くて身体は震える。 こんなことじゃ誰も救えない。 みんなを救えるだけの力が欲しい。 僕は指輪を握り締めて恐怖を追いやった。

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