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第485話.次の約束
目を開けたら肌色が目に入って、パッと顔を上げたら大好きな人の顔があって……
幸せな気持ちで胸が満たされる。
時間を確認したらもう夕方の6時になろうとしてる。
身体はさっぱりとしていてシーツもパリッとしているから、ダイ兄ちゃんが色々としてくれたって分かった。
僕の初めてをダイ兄ちゃんにあげられて本当に良かった。
静先輩と出会ってなかったら……誠先輩と敦先輩から嫌われていたら………
そう考えるだけで背筋がゾクッとする。
静先輩は……無理矢理好きでもない人にされてたんだよね……?
『いくら覚悟を決めていても、好きでもない人に、抱かれるのは……死ぬより辛いかも、しれない』
あの時の言葉の意味がようやくわかった気がする。
あの時はそんな事分かってる!って思ってた……でも今、ダイ兄ちゃんとこうしていると何も分かってなかったって思う。
肌が触れ合って身体の奥から湧き上がる幸せの感情。
それは全て相手が『好きな人』だから。
そうではない人が相手だったら……?
無性に静先輩を抱き締めたくなる。
どうして嫌な記憶を覚えているんだろう。
忘れていればあんなに苦しくなることもないのに……でも、ある時急に思い出したら?!
それこそ耐えられないかもしれない。
鈴先生にしか助けられないんだろうな……
暗い気持ちもダイ兄ちゃんの顔を見ると明るい気持ちに変わってしまう。
みんなと出会えたから今、こんなに穏やかな気持ちでいられる。
帰ったらちゃんとみんなにお礼を言わなきゃ。
そう思って明日には家に帰らなきゃいけないことを思い出した。
ダイ兄ちゃんと離れたくないなぁ
ジーッと寝顔を見る。
きっと何時間、何日、何ヶ月、何年見ていても飽きることはない。
目が開いて僕を見ると少し微笑んだ。
「来夢」
「起こしちゃった?」
「いや? 元々寝るつもり無かったんだが……今何時だ?」
「夕方の6時半になる所だよ」
お昼を食べてないから今にもお腹が鳴りそうだ。
「お腹すいたね」
「そうだな。カフェに連絡してみるか。あそこは夜もやってるから。来夢が大丈夫なら歩いて行くか?」
「手、繋いでいい?」
「もちろん」
手を繋いで歩く。
何気ないことかもしれないけど、こういうことが本当に嬉しい。
ベッドの端までは行けた。
立ち上がると少しフラフラとするが、大丈夫そうだ。
タオルケットを肩からかけられる。
「その格好のままは目に毒だから。荷物こっちに持ってくるから待ってて」
そう言われて全裸だったことを思い出した。
「あ……うん。ありがと」
タオルケットにくるまってベッドに座る。
自分で脱いだTシャツとマイクロミニのパンツを回収して待つ。
荷物から下着を出して服を着る。
よく考えたら真昼間にあんなえっちなことしちゃったんだ………
「来夢? 顔赤いぞ。どうした?」
「昼間からあんな……っちなことしちゃったから………」
「夜の方が良かったか?」
いつもよりも低い声で耳元で言われてビクッとしてしまう。
「ダイ…兄ちゃん」
目を閉じれば唇に柔らかい感触がする。
それは直ぐに離れていって頭を撫でられる。
「カフェに連絡したら夜中まで開けてるから大丈夫だって。行こうか」
手を差し伸べられて、その手を握る。
ダイ兄ちゃんの手は大きくて温かい。
カフェに向かう道中色んな手の繋ぎ方をしてきて、指のまたをさすられて変な気分になってしまった。
きっとダイ兄ちゃんはそういう僕の気持ちも全て分かっててやってる。
非難の気持ちを込めて目を向けると優しい眼差しのダイ兄ちゃんがいて……結局許してしまう。
「来夢」
「何?」
「好きだよ」
「……僕も」
何度このやり取りがあったかな……?
「いらっしゃいませ〜。あ、大輝くん。その子? 君の大切な人って」
「そうですよ。可愛いでしょ?」
「初めまして。メニューになくても作れそうなものは作るから、なんでも言ってね」
カフェのマスターは穏やかな笑顔で頭を撫でてきた。
「ありがとうございます!」
「マスターの料理はメニューに載ってないものの方が美味しいと思う」
「それは、みんなから言われる」
苦笑しながら席に通される。
水が置かれて1口飲んでその美味しさに驚く。
「美味しい……」
「ここの水は美味いよね。一応メニュー表置くけど……何かリクエストはある?」
なぜだかオムライスが頭に浮かぶ。
さっき静先輩を思い出したからかな……
「オムライスは出来ますか? できたらデミグラスソースがかかったのが……」
「それなら出来るよ。大輝くんは?」
「同じものを大盛りで」
「了解。少し待っててね」
出てきたオムライスも美味しかったけど、やっぱり静先輩のオムライスの方が好きだった。
別荘に戻ってダイ兄ちゃんの腕の中で眠るのは心地よかった。
ずっとくっついていられたらいいのに……
帰りの車の中でダイ兄ちゃんが素敵な提案をしてくれた。
「来夢、夏休みの終わりにも旅行に行かないか?」
「え? いいの?」
「もっと一緒にいたいが、仕事の方も準備があるから………」
少しでも会えるのならそれでいい。
「その旅行の前にも顔見るくらいは出来る?」
「もちろん」
大好き
今回の旅行で再確認した。
離れ難い気持ちを押し込めて……笑顔で手を振った。
すぐに会いたい気持ちでいっぱいになる。
1人のベッドは広過ぎるよ
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