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第7話

「ユウ...?どうしたの?」 あまりにも静かなユウを伺うように覗き込むと口の端から血が滲んだ涎を垂らしてぼんやりと宙を見つめている 「ユウ!」 大きめに声をかけて視線を合わせようと顔を向かせると、目を合わせた瞬間に火がついたように泣き出した 「わぁぁぁぁぁ!!うわぁぁぁぁぁぁん!!」 相当痛かったのだろう...顔を真っ赤にして泣きわめいている 「わかった、わかった、ユウ......泣かないで?」 大声を張り上げて泣き叫ぶユウの手錠を外して背中に手を差し込む 抱き上げてベットに目をやるとシーツはびっしょりと汗で濡れ、ユウの形の染みを作っていた 「頑張ったね!エライエライ」 泣きじゃくるユウを宥めるようにその小さな背中を何度も擦る 泣きじゃくりながらしがみ付いたユウの手が彼の背中に爪を立てた 「うんうん、えらいね、ユウは、おりこうだね」 トントンと背中を叩いて呼吸を落ち着かせるように言い聞かせる 汗で張り付いた髪の毛を梳かして、今だに雫を垂らすこめかみに唇を寄せる しばらくするとようやく落ち着いたユウが少しの引きつけだけを残して大人しくなった 「落ち着いた?」 ーーこれはいつもの日常 苦痛を与えては泣き叫ぶユウをなだめては立ち直らせ、傷みの分だけ甘えさせてやれば、されたことも忘れて笑顔を向ける...そのはずだった けれど今日に限って、ユウはいつもと違っていた ユウは彼の顔を見上げるとガタガタと震え出し、その身体を押しのけるように自らの手を離す 「ユウ?」 彼の腕の中から逃げるようにすり抜けてベットから飛び降りようとした しかし、その一瞬に彼はユウの首輪を鷲掴みにしてひきずり倒した 「がはっ!!」 勢いよくベットへ引き戻されたユウの身体が彼の前に跳ねる 倒れこんだユウの細い首に彼は手をかけて力を込めた 「なに逃げてんだよ」 凄むように低い声でいうと、その喉元を徐々に締め上げていく 「ぐあっ...がぁぁっ...」 ユウは口の端から涎を垂らし、その苦しさに逃れようと悶えて彼の腕を掻き毟る 「ご...め....らさい」 朦朧としながらユウは教えてもらった謝罪の言葉を口にする 彼は咄嗟にでたユウの言葉に驚いて指の力を緩めた 「ちゃんと謝れるんだねぇ」 「.....」 「怖いの?」 それは肯定してはいけない言葉 言われたら頷いてはいけない決まり それなのに、身体が嫌がって首を横にすることができなかった 「ユウ?聞いてる?」 キョトキョトと目線が動いてしまうユウの顎を掴んで無理やり目線をあわせる 「痛いの?」 それでも首を横に触れなかった 背中にまた汗のしずくが流れる 痺れを切らして彼は片手で胸の傷口を鷲掴みにした いつの間にか血は止まっていたが今だにその傷は激しい痛みを残していて、掴 まれた瞬間にあの恐怖が蘇った 「あはは..震えてるね?よっぽど痛かったんだぁ」 彼は楽しそうにケタケタと笑っている ーー痛くて痛くて仕方がなくて、怖くて怖くてたまらなかった ユウがそう思っているのが表情や目線で分かる彼はそれがたまらなく楽しくてやめられない 「痛いの?」 執拗に傷口に爪を立ててユウの顔を覗き込む 彼の黒目に映る泣いている自分の顔を見ながらユウは唇を震わせる 痛い痛い...いたい...いたい...いたい.... 「いぁ.....」 震える唇が何かの言葉を発しているようで彼は思わず耳を寄せた 「ユウ?なぁに?」 「いたい....よぉ...」 途切れそうな声で悲痛な叫びを絞りだした この言葉は認識はできるとも話せるようには教えていなかった 「すごいねぇ!しゃべれるようになったの?」 「うぅーー...」 泣きながらぐしゃぐしゃになった顔を何度もぬぐってやる だけどユウの目からはどれだけぬぐってもとめどなく涙があふれた 「わかったよ、今日は頑張ったから終わりね?」 あまりにもおびえて泣くから彼は掴んでいた手を離てやることにした このままやってもつまらない....そう彼は思っていた 壊れてしまっては意味がない ギリギリのところで保っていてもらわないと.. 泣いて縋って..だけど彼の手を離せない...そんなユウを愛しているから 「もうしない...ね?」 分っているのかいないのか...顔をぬぐってやるとされるままにおとなしくなった 「俺のこと好き?」 そう問いかけると眉毛をハノ字に曲げて頷いた 「じゃぁ...俺にキスしてよ」 これは理解できないらしくうるうるとした目を向けた 彼はユウにわかるように自分の舌を突き出してみせた ユウは少し戸惑いながら自ら顔を近づけて彼の舌に自分の舌を絡ませる 彼は内心ホッとしながらユウを味わい、次のことを考えていた

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