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第8話
絶対服従...とは逆らうことは絶対に許されない
何があろうとも、飼い主の命令に従うこと
彼は何もわからないユウにそれを何度となく強いてきた
最初こそ嫌がっていたものの、今となってはたいていのことは許容範囲になってきているように思える
服従させるには暴力が一番だと思う
痛みこそどんな人間をも変えられる最大の攻撃だ
だけど今日のユウに与えた痛みは許容範囲を超えたらしい
泣きわめくだけにとどまらず教えてない言葉まで口に出し自分の限界を伝えてきた
「ちょっとやりすぎたかな...」
そうつぶやきながら一人煙草をふかしていた
ユウにはきちんと手当を施していつもの部屋に戻してきた
本当はもっとかわいがってやりたかったけれどこのままだと壊れてしまいそうだった
このままだとエスカレートしていきそうな自分も怖かった
だけどユウをあの部屋に戻し鍵をかける瞬間、こちらを見つめる目がひどく悲しそうでなんだかひどい罪悪感にかられた
今からユウの好きなプリンでも買ってきてあげよう
もっともっと耐性をつけてもっともっと自分好みにしあげていきたい
自分だけにはそれが許されるはずだから
ユウには自分しかいないのだから
*******
また一人ぼっち....
ユウは壁にもたれながらぼんやり考えていた
頭の中で今日のことを回想するように思い出す
痛かったこと
怖かったこと
うれしかったこと
おいしかったこと
彼が頭を撫ででくれるのがうれしい
笑ってくれるのがうれしい
一緒にいてくれるのがうれしい
だけど...痛いのは怖い
怖いのは嫌い
だけど彼は痛いのが好きで怖いのが好き
自分は言葉を話せないし、理解もできない
したくても、しようとしても言われたそばから零れ落ちるように抜けてしまう
だけど、彼と暮らすようになって、少しづつ分ることが増えた
彼が何を求めているのか....それがほんの少しだけ分るようになった
だから今日、自分から彼の手を離してしまったことはいけないことだと思った
だからまたここに戻されてしまったのだと...
しくしくと少し痛む胸の傷にはきちんとガーゼが覆うようにテープで止められていて指先には包帯がまいてあった
指先に包帯を巻きながら彼は「すぐ良くなるよ」といった
いつも傷口を直してくれる魔法の言葉
言われれば嘘のように痛みが消えていく気がした
「良くなる」は「痛くなくなる」のことかなぁ...とユウは漠然と思う
痛くないと包帯は巻いてもらえない
痛くないと優しくしてもらえない
包帯を巻いてくれるなら痛くてもかまわないと思った
下を向くと自然に涙がぽろぽろと流れてしまった
傷だらけの腕で涙をぬぐう
昨日から彼の部屋にいさせてもらったせいで余計、ここにいるのがさみしくて応えてしまう
「ひっく...ひっく....」
小刻みに震えながら彼のことを想う
もうここに来てくれなかったら...
そう思うと怖くて怖くてたまらなくて思えば思うほど涙が止まらなかった
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