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第21話
指先のこびりついた血液を洗い流して消毒の用意をする
ツンとしたにおいがして指先から泡がこぼれた
「痛い?しみるかなぁ...」
その小さな指先に痛々しく見える爪の剥がれた赤黒い皮膚
三本目の指に包帯を巻いていく
「ユウは嫌じゃないの...?」
ふいに彼はユウに向かって聞いてみた
ユウは指に丁寧に巻かれていく包帯を見ながらそこから続いて伸びる帯を目で追って、ときより嬉しそうにニコニコと笑っていた
「...わかんないか...」
彼の質問を聞いているのかいないのか....
ユウは手元で何かを見つけたように目を輝かせてたり彼の肩越しをじっと見つめたり、コロコロと表情を変えてはフラフラしたり....
彼にも何を考えているのかはわからない
だけど自ら選んでここにいる
その事実だけで十分だった
「もう離れないからね」
彼は巻き終えた包帯をハサミで切って端を留ながら、聞いているのか分らないユウに向かって話し続ける
「ユウも絶対、俺から離れないって誓って」
ユウは彼の顔を見なが首をかしげている
意味は分からないが自分に話しかけているのは理解できているようだ
右胸に残る十字のあとを眺めながら、彼は手に持っていたハサミをシャキンと鳴らして空を切った
自分の愛を誓わせる方法を
ハサミのこすれる音を聞きながら考えていた
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