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第25話

だけど一向に慰めてはくれなくて....それがさらにユウを追い詰めていった コンロではシュンシュンとやかんのお湯が沸騰する音が聞こえてその細い注ぎ口から白い湯気が上がっていた 彼はユウがうずくまって泣いているのを避けるようにしながら移動して沸騰したやかんに手をのばした その時、ユウはそんなこともわからずに彼の片足に体ごと縋りついた ワザとではなかった ただ振り向いて欲しかっただけ... 「わッ...」 足をとられバランスを崩し、彼は持っていたやかんを床に落とした ガシャンーー!!という金物が床に転がる音と立ち上る湯気 跳ねて飛び散る熱湯が彼の足にかかる 「熱...」 思わず顔をゆがめると彼の足元で小さく唸り声が聞こえた 「ぅぅ...」 ユウは彼の足を掴みながらそこに倒れこんでいた 「ユウ!」 慌てて抱き起し体を確認する やかんから流れた熱湯は運よくユウの全身を濡らすことはなかった しかし唯一投げ出された左の太ももだけはそれをダイレクトに浴びたらしく、一瞬の出来事だったはずなのにみるみる赤くそこが腫れ上がっていく 急いでユウをキッチンに座らせて晴れ上がった太ももを冷やそうと足をシンクの中にいれた 直接水道から水を大量に流してできる限り冷やしていく 「大丈夫?ユウ...痛い?」 シンクで大量の水を流しながら彼はユウの顔を心配そうにのぞき込んだ その瞬間、少年は彼にしがみ付いて声を上げて泣き出した 「痛かったね?大丈夫だよ、よしよし」 引きつけるように泣きだしたユウを抱きしめて何とか宥めようと背中を擦った ーーけれどユウが泣き出し理由は火傷のせいではなかった 彼が自分を見てくれたこと 目を合わせて自分の名前を呼んでくれたこと それが嬉しくて涙が込み上げてきたのだ 痛みは感じなかった ただ自分がいないものとして否定されて扱われたことがたまらなく怖くて、やっと目を合わせてもらえたことにホッとして涙がこみ上げてきたのだった

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