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共同生活ー椎名ー
それからというもの何とも奇妙な三人での共同生活が始まった
手錠が外されたのに自らここにとどまってしまうのはなぜだろう
このまま勢いに任せてすぐそこに見える玄関のドアに飛びついて逃げることだってできるはずだ
だけどそれをしないのはなぜだろう
彼が怖いから?
それもある...監禁されたり暴力の支配下に置かれた人間は、拘束が解かれてもそこから逃げれないようになってしまうのは良くある話だ
だけど僕は曲がりなりにも精神科医だ
そういった患者はたくさん診てきているし、それに対してもノウハウは心得ている
「先生のことを信じている」
彼の言葉は鎖と同じだ
心の奥で、彼がこうなってしまったことへの罪悪感を見透かしている
目の前で毎日のように暴力を受けるユウに何もできなかった
この子をこのまま置いていけないと思っていることを彼は見抜いているのだ
「ユウよかったね?先生って優しいね?」
その言葉には心などこもっていない
けれど、その子はそれを聞かされて、ニコニコ笑って何度も頷く
理解など出来てはいないだろう
彼が笑うから笑うのだ
彼が僕を支配して、ここに置きたいなら乗ってやる
必ずここから少年を連れ出して逃げてやる
彼が特別に想う少年こそ彼の弱みのはずだから
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