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共同生活
ミツルは毎日どこかへ出かけていく
すぐ帰ってくることあれば半日帰ってこない日もある
その間、椎名はユウいつも二人きりで過ごした
「また出かけちゃったね。お仕事かな?」
彼が人に混ざって仕事が出来るとは思わなかったけれど、毎日いないのだからなにかしらしているのかもしれない
ユウはミツルが玄関から出る直前まで腕に抱きついて扉が閉まった後もしばらく玄関でぼんやりしてる
「ユウくん」
声をかけると、はっとして、椎名の元に駆け寄ってくるのだ
「今日は何して遊ぼうか?」
今まで1人きり
遊ぶ相手などいなかったのだろう
ここには遊ぶものも置いていない
唯一あるのはこの間彼が買ってきた犬のぬいぐるみ
それだって、先日なのだからそれ以前のことを思うと胸が痛い
ユウはぬいぐるみを片時も離さない
先日食事の時に、邪魔だからと彼にそれを取り上げられて泣いた
彼は椎名の眼の前で、ユウを床に叩きつけ、転がったところを蹴り上げた
ゲホゲホと咳き込みながらユウは彼の足に縋り付いて許して欲しいと全身で訴えた
彼はぬいぐるみと食事とどっちがいいか選べと言い、
ユウは迷うことなくぬいぐるみ選んだ
そしてユウの食事はそれで終わってしまった
椎名は自分の食事を少年に与えようとしたけれど、ユウは頑なに拒んで、受け入れなかった
それを見てミツルは嬉しそうに笑うのだ
「だめだよ、ユウは。俺がやらないと食べないもん」
満足そうに笑いながら彼は自分だけ食事を続けた
ユウはその足元で ぬいぐるみを大事に抱えて何度も撫でては顔を寄せる
その日は朝早くから彼は出かけてしまって何も食べてはいなかった
きっとお腹も空いているはずなのに、ユウは食事よりもぬいぐるみを選んだ
「お気に入りなのかなー...それ」
少しつまらなそうに、スプーンを咥えながら彼は言う
「好きなの?それ?」
するとぬいぐるみを撫でる手が止まる
「それ、好きなの?って聞いてるんだけど」
「あ......」
口を開くユウの唇が震える
「なに?」
目を細めながら言う彼の一言に、体をピクッと反応させて、ユウはぬいぐるみを床にちょこんと座らせた
手放すのが嫌なのはあきらかだった
「くれるの?俺に」
「これ以上はやめろよ!」
見ているのが辛くなって椎名は口を挟んだ
「あーぁ。先生がだめだって。よかったね?」
だけど、ユウは朝までそのぬいぐるみをさわることはなくて、ただ隣にずっと座って抱きしめたいのを我慢しているように見えた
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