外は暗くなり、部屋の中が、ひんやりしてきた頃 「遅いね....」 椎名が腕の中のユウに話しかけたときだった 急にピクリと体を起こして、一目散に玄関まで走っていく 「どうしたの...！？」 椎名が声をかけても、玄関をじっと見つめたまま動かない するとガチャガチャと鍵を差し込む音がして、扉が開いた 「ユウ、ただいま...遅くなっちゃった」 扉が完全に閉まるのも待てないくらいユウはすぐにミツルに抱きついて全身で喜びを露わにしていた 帰って来るのが分かるなんて.... それも教え込ませたのか、自らわかるようになったのか それでもユウにものを教え込むのは時間がかかることだと思う 何も分からない状態では、何をどう教えてあげればいいのか分からない けれどユウと彼の間には、まだ椎名の知らない決められたルールがあるように見えた 「あ...先生、いてくれたんだ！良かった」 「僕が出ていっても良かったの？」 「んー....それならしょうがないよね」 そうやって人の心を掻き立てるような卑怯な言い方をする 「遊んでもらったの？」 腰にしがみ付いて見上げるユウを抱え上げてその頬にキスをする 頬にすり寄るようにして目を細めて笑うユウはとても嬉しそうに見えた そしてユウは彼に向かって小さな舌を出して顔をつきだした それはさっき椎名に向かってやったこと 何をしてほしいのかわからなくて何もできなかった 椎名は二人を観察するように見ていた すると彼はその小さな唇に自分の唇を合わせ、小さく突きだした舌を絡めるように飲み込んだ 小さく水音が聞こえ、ユウから微かに吐息が漏れる 「はっ.....」 二人はひどく妖艶に見えて、自分がそれを強請られていたのかと思うと急に恥ずかしくなって目をそらした ミツルはユウを抱きかかえたまま、顔に息を吹きかけて、目を細める ユウの前髪が吹きあげられてパラパラとなびいた 「なぁんでユウは甘いのかなぁ？」 「....？」 「先生...なんかユウにあげた？」 そう問いかけられてギクリとした それは椎名がユウに与えたプリンのこと 「あ....えっと...うん。昨日から何も食べてないから....お腹すいてたみたいだし」 「そっかぁ、ふーん....良かったね？ユウ」 勝手なことをしたことを怒っているのか、その表情はユウに隠れてまだ見えない 「いけなかった？」 「別に？ただ俺以外でも食べたことに驚いてるだけ」 それでもじわじわと部屋の空気が変わっていくのを肌で感じ取れた あぁ...彼は怒っている 「ユウ...ちょっとあっちに行こうか」 ユウは彼の首にしがみ付いて彼の変化に気づけないまま、ニコニコした顔が彼の肩越しから見える 「ちょっと待って！ユウくんは悪くないよ」 ミツルの腕を掴んでユウを連れて行こうとするのを引きとめる 「別に怒ってないから」 掴んだ腕を交わして彼は少ユウを抱えたまま寝室に消えていった