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知らない世界

「ほら、もう寝るよ?」 ベットの上に座るユウは寝る前の身支度をする彼を目で追っていた 横に彼が腰を下ろすと軋んだ音と一緒に自分の周りが沈んでいく そばに置いたぬいぐるみがコロコロと転がってあわててそれを抱きとめる 今夜はぬいぐるみを連れてきてもいいという許可をもらった 「持ってきていいよ」 今日は彼からの「いいよ」がいっぱいあった なんだか頭の中が嬉しいことでいっぱいで自然と顔がにやけてしまう 「ユウ」 気持ちがふわふわと別のところに捕らわれてしまうとつい反応が鈍くなる 「ユウ?」 はっと気づいてあわてて目線を彼に移す 動揺して手のひらからぬいぐるみが零れ落ちる 今日はとってもいい日 彼がなんでも許してくれた日 このままどうか怒られないで今日が終わってほしいと願う "お前さぁ、聞いてんのかよ" また言われてしまう どうしよう どうしよう ユウはすぐに反応できなかった事を取り繕うかのように身体を彼に寄せる 最初は返事ができるようにならないといけなかった 「はい」と言えればそれで良かった 名前をよばれたら返事をする 「ユウ」っていわれたら「はい」 たったそれだけ それだけなのにそんな簡単なことができなかった できないから毎日身体には痣が増えていった 彼がいない一人ぼっちの部屋の中で言われたとおりに口を開けてみたりして、けれど喉からでる音は彼が求めているものではなかった なんでできないのかなぁ...... そのころのユウは今よりもっと稚くはるかに何も知らなかった そのうち彼は「もういいよ」とうんざりした顔でため息をついた "名前を呼んだら俺の目を見ろ" いつの間にかこれに変わった 優しい彼はできない事を許してくれた 「ユウ?怒ってないよ。」 無意識に目が泳いでいたユウを覗き込むようにして彼は言った 「う...ぁ...?」 ぽかんとしながら彼を見上げる やっぱり今日はとってもいい日 頭をポンポン撫でてからその手が下に降りてくる 降りてきた手がユウを包み込むようにして頬で止まって、彼の親指がそっと唇に触れてなぞる 思いだしたようにユウは唇の間から小さく赤い舌を覗かせた 彼の指に舌先が触れるとユウはその指をチロチロと舐めて口の中に飲み込んでいく 輪郭をなぞって丁寧に丁寧に指紋の形もわかるように舐め上げる 唾液を絡ませ水音させながら吸って柔らかい唇で包み込む それがまるで彼のモノであるかのようにユウは愛しむように咥えこんだ

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