111 / 445
大事な名前
それは弧を描き足元に落ちてきた
「わぁ!よかったね?ユウくん!お友達がまた増えちゃった」
「...?」
「この子も一緒に遊ぼうかぁ」
それは触らせてもらえなかったぬいぐるみ
椎名はそれを手に取るとユウの片方の手の中にぎゅっと握らせた
ーー いつも下から見上げていた
ひとりポツンと棚の上に置いてあるぬいぐるみ
誰にも触ってもらえなくて
あの子はひとりぼっちでさみしくないのかな
ひとりぼっちが寂しいのは自分が1番よく知っているから
とってもかわいそうだと思った
ひとりぼっちは寂しくて、悲しくて、誰かに触って欲しくなる
ユウが悲しい時は彼は触ってくれるから
あの子が泣いてしまった時は自分が触ってあげようと思っていたの
だけと、あの子がいるところはとっても高くて到底届きもしなかった
だから彼に「いいよ」といわれるまでもう少しだけ待っててね
「遊んでいいよ。ユウ」
予期せぬ彼の行動にユウはどうしたらいいかわからなかった
本当にさわってもいいのかな
怒ったりしない?
不安が判断を鈍らせていく
すると彼はユウの不安をすぐに読み取ってぬいぐるを握った上からさらにその手を握って態度でそれを分からせた
最初は遠慮がちだったユウの目が次第に輝きを増していき、二体のぬいぐるみはユウの手の中で動きだした
ぎごちなく擦りよせたり、片方が近づいたり逃げたりしながら自分なりに遊ばせている
ともだちにシェアしよう!